金融商品
(写真=PIXTA)

金融の世界で、リスクとリターンという時に、分かりにくいのはリスクという概念です。

日常生活では、リスクとは危険と言う意味で使う方が多いのではないでしょうか。しかし金融でリスクと使う場合は、上昇・下落といった、もたらされる結果の幅(ちらばり)のことを指します。

金融におけるこの概念は、統計学からきており、どの程度のちらばりがあるかを、リスクという考え方でとらえています。


金融商品でいうリスクとは

以下詳しく解説しましょう。例えば、3年間の株式の利益を想定します。

1年目30%の利益、2年目-10%、3年目10%の利益となりました。

この場合のリスクという概念を見て行きます。まずは、3年間の利益を見ます。そして、平均を取ります。

{30%+(-10%)+10%} ÷3=10%

この10%がいわゆる平均リターンで、「期待収益率」とも言います。


実際にリスクを計算してみよう

では上記の数字を基に、実際のリスクとリターンを具体的に計算していきましょう。

各年毎の計算(その年の利益-平均リターン)を出して、それを統計的手法で二乗、最終的に合計値の平方根をとります。(興味がある方は統計学で学んでみてください)

1年目 30%-10%(平均リターン)=20の二乗=400
2年目 -10%-10%(平均リターン)=-20の二乗=400
3年目 10%-10%(平均リターン)=0の二乗=0

この二乗値の合計は800です。800の平方根は=約28%となります。この株式の期待収益率(過去の利益の平均値)は10%、もたらされる結果の散らばりを示すリスクは±28%という結果になります。

つまりこの株式は最大期待収益率10%+リスク28%=プラス38%から最低では期待収益率10%-リスク28=マイナス18%の収益率の範囲に収まることを意味します。


ポートフォリオ効果とは

資産運用の基本でよく言われるのが、「卵を一つの籠の中に入れるな」ということです。

これはどういう意味でしょうか。

まずは株式で考えてみます。2つの証券Aと証券Bで株式投資を行っているとします。

1年目証券Aは20%の利益、証券Bはマイナス10%の損失
2年目証券Aはマイナス20%の損失、証券Bは30%の利益
3年目証券Aは30%の利益、証券Bはマイナス20%の損失

この例の場合、もし証券Aだけに投資していれば、1年目は20%の利益ですが、逆に2年目は20%の損失となってしまいます。しかしA、B両証券で投資を行っていれば2社の合算によって安定的に毎年10%の利益を得られることになります。これが卵を一つの籠の中に入れず分散投資することによるポートフォリオ効果というものなのです。

そしてこの場合の鍵を握るのが、証券Aと証券Bの関係です。これを相関係数と言います。相関係数はプラス1からマイナス1という数字であらわされます。相関係数がプラス1は、同じ動きをします。マイナス1は互いに逆の動きをすることをあらわします。

例に出した、証券Aと証券Bは相関関係マイナス1で、ほぼ逆の動きをすることから、リスクを打ち消す事が出来ました。


ポートフォリオ効果を、国内債券、国内株式、海外株式、国内リート、海外リート等で考える

資産を組み合わせてポートフォリオを組んでいく場合、それぞれの資産のリターン(収益率)とリスク(損益のちらばり)と他の資産との関係、相関係数を考えていけば、比較的簡単にポートフォリオを組むことが出来ます。

参考までに各金融商品の過去の概況を見ていきます。(この各数字は今までの実績です)

国内債券 リターン1.8% リスク0.01%
国内株式 リターン11% リスク17%
海外株式 リターン15% リスク18%
国内リート リターン15% リスク18%
海外リート リターン20% リスク19%

国内株式との相関係数

国内株式 1
国内債券 -0.2
海外株式 0.7
国内リート 0.6
海外リート 0.59

つまり現時点では国内株式を中心に選択した場合、国内債券のみ逆相関ということになります。また、海外資産に投資する場合はさらに、為替リスク、国の信用リスクなどにも留意することが必要です。


投資に向かうときの考え方

投資におけるリターンとリスクという概念をご理解頂けましたでしょうか?
このリスクとリターンのトレードオフの関係に注意をはらって資産運用を行ってください。リターンを多く取ろうとすればその分リスクが大きくなります。

そして、ポートフォリオ効果を得るためには各金融商品同士の相関係数も参考にお考え下さい。(提供: ファイナンシャルスタンダード株式会社

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