空き家
(写真=PIXTA)

私は61歳の会社員。昨年定年を迎え、嘱託社員として週3日、同じ会社に65歳まで勤める予定です。ほぼ予想通りの退職金(2200万円)が出て、妻(60歳・専業主婦)と2人、どうにか暮らしていける老後資金の目処も立ち、ホッとしていたのですが、困ったことが起きてしまいました。

というのは、2カ月前に私の母が78歳で亡くなり、母名義の実家をどうすればいいか悩んでいるのです。数年前から母は要介護4になり、父の遺したお金で有料老人ホームに入っていました。そのため、築56年の古い一戸建てである実家は、空き家(敷地29坪)に。屋根が変形してきたため、市から適正管理の通知が来るほど、かなり老朽化していました。母が亡くなったので、この際、母名義で唯一の財産だった実家を売却し、お金にして妹と二分割したかったのですが、そんな簡単にはいかないようです。

解体費用がかかるうえ、家のある場所が最寄り駅から遠く、旗ざお状の変形敷地のために買い手が見つりません。今後、妹家族も私たちも、ここに住む気はありません。このままにしておくと固定資産税もかかりますし、何より、倒壊して近所に迷惑がかかると大変です。できるだけコストをかけずに、妹(54歳)と財産を分けるにはどうすればいいのでしょうか。(群馬県在住)


一般的な空き家対応方法「3選」

現在、日本全国で空き家が増加しており、社会問題の1つとなっています。特に親と離れて暮らしていた子が実家を相続し、家の老朽化や遠方のため管理ができないといったケースが多く、核家族化が進む日本では、これから空き家問題がより深刻になっていくかと推測できます。

一般的に、空き家は(1)ご自身(ご家族)が住む、(2)売却する、(3)貸す、のいずれかの選択になり、売却や賃貸を考えた場合には「空き家バンク」という家を借りたい購入したい人とのマッチングを行っている自治体もあります。

今回のご相談では、ご実家が空き家になり老朽化が進んでいる、解体費用がかかる、売却しようにも土地の買い手がつかないとのことでした。


自治体から「特定空家」と判断される可能性も

まず、問題点としては「家の老朽化」です。空き家等対策の推進に関する特別措置法が2015年5月から施行され、倒壊などによって保安上危険となるおそれのある家や衛生上有害となるおそれがある家などを「特定空家」と判断し、特定空家と判断された場合、地方自治体が除去や修繕などの指導や勧告ができるようになりました。

この勧告・命令に従わない場合は自治体が強制的に撤去する「行政代執行」が行われるここになります。この場合の撤去費用は所有者から徴収されることになるのです。

市から適正管理の通知が来ているとのことですし、ご相談の中にもあるように治安上の問題もあります。老朽化した家はできるだけ早めに解体されるほうが良いかと思います。空き家の解体に助成金を設けている自治体もありますのでご実家のある市役所に問い合わせてみてください。


「特定空家」勧告を受けたら固定資産税が増加

ただ、ご注意いただきたいのは解体後の固定資産税です。固定資産税には住宅用地特例があり、家屋があれば土地の固定資産税が最大6分の1に軽減されます。

つまり、ご実家を解体された後、土地を更地のまま(駐車場含む)にしておくと固定資産税が今の6倍になるということです。2016年度分から上記にあります「特定空家」の勧告を受けた家屋は特例から除外され、固定資産税が増加することになってしまいます。


賃貸用住宅に建て替えてみては

今回のご質問では「できるだけコストをかけずに、妹さんと財産を分けるにはどうすればよいか?」とのことでした。このような売却が難しい土地の活用方法として、賃貸用の住宅に建て替えることをご提案します。賃貸用住宅を建て、その家賃収入を建物のローンと固定資産税に充てます。

そのためには該当の土地が賃貸に値するかどうか、家賃収入でローンを賄うことができるかなど、まずは市場調査が必要です。一度住宅メーカーへ土地活用のご相談をしてみてはいかがでしょうか。

ただし、不動産を兄妹で共有の名義で持つということは将来的にトラブルになる可能性もあります。不動産鑑定士などの専門家にその土地の評価金額を出してもらい、その金額の半分を代償金として妹さんに退職金から支払い、ご本人一人の名義にした後、土地活用に着手するといった手順が良いかと思います。

また、市場調査で賃貸に適さない土地と判断された場合には、固定資産税が6倍になってしまうことを考えると、妹さんと話し合い、相続放棄をするのも選択肢の1つです。その場合にも一度、弁護士、税理士等専門家に相談されるといいでしょう。(ファイナンシャルプランナー:青木要介)(提供: ライブリー 退職金と未来のお金 )

【関連記事】
三井住友信託、日本郵政グループに関する投資信託を開発
SBI証券、10月初旬から新サービス「HYPER先物」開始
年金世代の「夢のアパート経営」は本当に儲かるのか
個人年金を選ぶ時に気を付けたい「3つのポイント」
年金受給中のご主人が死亡!残された「隣の奥さん」の生活は?