storie:手数料割引の物件には、どのようなものがありますか?

鈴木社長:大きく分けて2つあります。1つ目はリノベーション物件などで売主が不動産会社で、売る側から仲介手数料を100%いただけるときは、購入いただくお客様には手数料ゼロでご紹介しています。当社では、買主と売主の両者から手数料の法定上限の満額を頂くことはしておりません。

2つ目は、元付け(売主から物件の売却の依頼を直接受け、物件情報を他の不動産へ提供している不動産会社)がいて、仲介手数料がもらえない物件に関しては、売買金額の3%にあたる金額から30%を割引しています。その場合も物件が1億円以上と高額になった場合には、割引幅を大きくさせて頂いています

最近は大手の不動産会社でも支店レベルでは仲介手数料の値引きが行われることもあります。店長の裁量によるところが大きいようですが、お客様から「下げて」とお願いされたら、下げることもあるようです。

ただ、店舗によって仲介手数料は下げない方針をとっているところもあります。当社のように手数料は30%から最大無料というのは、そう多くはないと思います。

storie:扱っている物件のエリアや価格帯について教えてください。

鈴木社長:表参道から車で20分くらいの多摩川を渡らない二子玉川ぐらいまでが主な取扱いエリアです。当社のWebサイトに掲載している物件は5000万円以上のものはさほど多くはないので、1日2件ほど物件情報をアップしていくとすると、2000万円台の物件も含まれることになりますので、平均値を取ると4000万~5000万円です。


充実した物件情報のWebサイトに強み

storie:御社の強みはどのようなところでしょうか。

鈴木社長:こちらから特に営業をかけなくても、物件の写真がたくさんアップされていて、仲介手数料がかからないと書いてある当社のWebサイトを見て、連絡をしてきてくださるお客様が一定数いるということでしょうか。

物件を買う方は、ネットで検索したり、地場の不動産会社や大手の不動産会社へ相談に行くと思います。当社はもともとネットを見ている方たちには強く、直接連絡をいただいてきました。他の不動産会社さんのところで見た物件が気に入って、契約を検討されている方が、事故物件ではなかったか?とか、周辺環境は良いか?とか、ご自身で気になる内容をネットで掘り下げて調べているときに、当社のWebサイトを見つけていただき、契約は仲介手数料の割引を行っている当社に任せていただけるというケースです。

もちろん反対の場合もあります。その時は、当社のお客様のケアが不十分だったということで諦めます。高い買い物をするのですから、いろいろな所で情報収集をするのは当然のことですし、最終的に当社で契約していただけなくても、それは仕方がないことです。

お客様にはある意味で「振り回される」ことが当たり前だと思っているので、土日連絡つきで10軒案内して、と言われれば、全部ご案内しますし、その結果、お客様から「やっぱり買いません」と言われても、音信不通にならずに、「買わなくなった」とお知らせいただけるだけありがたいです。


ほどよい距離感でお客様の要望に尽くす営業スタイル

storie:表参道にあるおしゃれなお店ですが、営業で心がけていることはありますか。

鈴木社長:当社では究極的に『お客様寄り』な不動産エージェントを目指しています。基本的にお客さんに喜んでもらえることは全部やります。お客様が入店の際には笑顔で対応しますし、お客様が気に入られた物件はすぐ見に行けるように、会社は年中無休で、時間的にも遅くまで対応しています。

夜も予定がない限りは、お客様に徹底的にお付き合いさせていただいています。お客様から「夜、何時まで?」と聞かれたときには、「何時まででも良いですよ」と答えるようにしています。そういった意味では、おそらく他社以上に動いているのではないでしょうか。

たとえ成約に至らなくても、別の機会があるかもしれませんし、他の方を紹介してくれる可能性もあると考える営業スタイルです。

それから、これは私がかつて、お客として物件を見に行った際に感じたことを反映しているのですが、お客様のプライベートについては、はじめから聞かないようにしています。会って間もないのに、年収や家族構成、勤務先はどこかなど、どんどん聞いてくる営業もいますが、お客様の職業などをお尋ねするのは、ある程度、親しくなって打ち解けられるようになってからでないと、失礼にあたると思います。

物件のご案内をする時も、お客様の好きな所から見ていただきたいので、担当者がピッタリとくっついたり、お客様より先走ってお部屋の案内をするということはやっていません。その代わり、物件を見に行く際に乗り込んだエレベーターの中で、行き先階数のボタンを押しながら「さぁ、今から行くぞ。どういうとこなかな」とか、お客様を多少ワクワクさせるような演出をしてみたり、ご案内した物件がお客様のご期待に添えなかった場合には、ちょっと失敗してしまったと悲しそうな顔をしたりと、喜怒哀楽が分かる何かしらの反応をするように指導しています。

当社での営業担当者は、頭が切れてテキパキこなすコンサルタントのようなタイプよりは、人と接することが好きで、笑顔で気配りができる飲食やアパレルなどの接客業をやっていたような方が向いていると思います。


リノベーションを含む転売事業と外国人向けの物件ニーズに期待

storie:外国人向けの賃貸物件の仲介もされていますね。

鈴木社長:売上の9割は売買仲介ですが、2014年の冬からは外国人向けの賃貸物件の紹介にも乗り出しました。売買も行っています。バナーにも英語で対応可能と書いてあるので、気軽に声を掛けていただき、賃貸物件の問い合わせをいただくことがあります。

東日本大震災後、外国人向けの物件需要は一旦、減少しましたが、今は企業が戻ってきていますので、今後は重点的にアプローチしていきたいと思っています。

storie:リノベーションは取り組まれる予定ですか。

鈴木社長:今年の4月から転売事業をスタートさせたので、リノベーションのノウハウが蓄積されてきたら取り扱う予定でいます。お客様でも仲介手数料無料のリノベーション済み物件を4~5件見ていくうちに、「やっぱり自分達でやった方が好みに近づけられる」という方は多く、中古物件を購入された方の1割はリノベーションをしています。今はまだ自社でリノベーションの施工は行っていないので、そういったお客様には工務店さんを紹介しています。

storie:東京オリンピックまで不動産バブルは続くのではないかと言われていますが。

鈴木社長:当社はオリンピックが東京で開催されても、されなくても業績はさほど変わらないと思います。小さい会社であっても、人員を増員している以上は、業績は右肩上がりでなくてはいけないと考えていますが、不動産のニッチな分野で仕事をしている気持ちでいるので、オリンピックがあるからどうこうというのは一切ないですね。これまで同じことを淡々とやっていきます。

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