(写真=マネーゴーランド)
(写真=マネーゴーランド)


①消費税率は2017年4月に8%から10%に引き上げられる予定
②消費税には低所得者ほど負担が増す「逆進性」があると見られている
③自民、公明両党は「複数税率」を強く推しているが、軽減税率の対象選定が難しい

マイナンバー活用した還付案は後退

財政悪化が進む中で消費税率は2017年4月に8%から10%に引き上げられる予定です。その消費増税とワンセットで導入が検討されているのが軽減税率です。どういった内容なのかを見ていきましょう。

消費税の引き上げ議論における争点は、低所得者への負担軽減策です。消費税には低所得者ほど負担が増す「逆進性」があると見られています。

その対策にはいくつか方法がありますが、消費増税を主導する自民、公明両党は「複数税率」を強く推しています。以前に話題となりましたが、マイナンバーを活用して「低所得者に消費増税分の税金をあとで還付する」といった財務省の提案は大きく後退したようです。

この複数税率というのは、食料品を中心とした生活必需品について、10%となる予定の標準税率よりも低い軽減税率を適用しようとするものです。実は日本のように消費税を単一税率としている国は少数派。欧州を中心に世界中で幅広く採用されています。

フランス、カナダ、英国の興味深い例

ただ、導入には課題が少なくありません。それは何を軽減税率の対象とするかが難しく、微妙な問題を含むからです。導入している国々では、軽減税率の対象品目の線引きに苦心してきましたが、興味深い事例を挙げてみましょう。

●フランスでは、マーガリン、キャビアは約20%の標準税率となるが、国内産業の保護を目的にバター、フォアグラ、トリュフに5.5%の軽減税率を適用

●カナダでは、ドーナツは5個以下ならば店内で食べると見なされ標準税率(5%)となるが、6個以上ならテークアウトと見なされてゼロ税率を適用

●英国では、名物のフィッシュ&チップスなど温かいテークアウト商品は約18%の標準税率となるが、スーパーの惣菜などはゼロ税率を適用

特定の食品にだけ軽減税率を適用していますので、競合相手からは相当な反発が出たようです。

日本ではどうなるのでしょうか?12月16日に自民、公明両党は、2017年4月の消費増税時に軽減税率を導入するとした「2016年度の税制改正大綱」を決定しました。その中で「酒類と外食を除く生鮮食品と加工食品」を軽減税率8%の対象とすることが盛り込まれました。これから国会で本格的な審議が始まり、2016年3月には正式に決定するものと思われます。

小松英二 CFPR(ファイナンシャル・プランナー)/ 経済アナリスト

筑波大学卒業後、日本銀行入行。景気動向調査、対金融機関・対政府の金融取引などに携わる。 その後2007年4月にFP事務所を開業し、資産運用、相続対策を中心に相談業務、執筆活動を展開。 生活者向けセミナー、企業の社員研修、FP継続教育研修などの講師も務める。 帝京大学経済学部・湘北短期大学総合ビジネス学科 非常勤講師

(提供: マネーゴーランド )

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