武蔵野大(東京都西東京市)が千代田女学園(千代田区)と合併して国際バカロレアを推進するという。2015年12月24日に文部省から許可された。神奈川県横浜市の聖ヨゼフ学園小学校は、2016年3月1日付けで国際バカロレアPYP候補校に認定されるという。世界では140以上の国で4344校、日本では35校が導入している(2015年10月1日時点)。いったい、この「国際バカロレア」とは何だろうか?
「国際バカロレア」とは世界共通の教育プログラム
本部をジュネーブに置く、国際バカロレア機構(IBO)が提供する教育プログラムのこと。略してIB(International Baccalaureate)と呼ばれている。設置されたのは1968年、チャレンジに満ちた総合的な「世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生の教育プログラム」で、世界の複雑さを理解した、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身につけさせることを目的としている。
そして現在、認定校に対して共通カリキュラムを作成、世界共通の国際バカロレア試験が行われ、国際バカロレア資格が授与されている。
国際的な視野を持った人材を育成するために、年齢に応じた教育プログラムが設置されている。プログラムは全部で4種類ある。
まず「プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)」は、3歳~12歳を対象とした初等教育プログラム。精神と身体の両方を発達させることを重視している。世界1323校、国内19校で実施。1997年に設置されたすべての言語で提供可能なプログラムだ。
次に「ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)」は11歳~16歳を対象とした中等教育プログラムで、学習と社会のつながりを学ぶことを重視している。世界1219校、国内9校で実施。1994年に設置された、これもすべての言語で提供可能なプログラムだ。
そして「ディプロマ・プログラム(DP)」。英語、フランス語、スペイン語で提供されている、16歳~19歳を対象にしたプログラム。所定のカリキュラムを2年間履修し、試験で所定の成績を収めることで国際的に認められる大学入学資格の取得が可能。1969年最初に設置されたプログラムである。
最後に「キャリア関連プログラム(CP)」は16歳~19歳を対象にしたプログラムで、生涯のキャリア形成に役立つスキルの習得を重視し、キャリア教育・職業教育に関連したプログラム。2012年に設置。一部の科目は英語、フランス語、スペイン語で実施されている。
これらのプログラムは次のような理念をもとに作られている。それは「多文化に対する理解と尊敬を通じて、平和でより良い世界の実現のために貢献する、探究心、知識、思いやりのある若者の育成を目的としている」「世界中の違いを理解することで、自分と異なる人々にもそれぞれ理があり得ることが分かる心を持つように働きかけている」というものだ。
また「正解のない問題」に対応するためにグループ・ディスカッションをする授業が設けられている。あまり日本の学校の授業では見られない授業。日本人にも足りていない部分を補う授業とも言えよう。
なぜ「国際バカロレア」が注目されるのか
「国際バカロレア」が注目されるようになったのは理由がある。2013年6月に安倍内閣の閣議決定された日本再興戦略の中で「国際バカロレアDP認定校200校計画」と打ち出されたからだ。これは2018年までの目標として掲げられている。国際競争力を向上させるためには人材育成が重要であるという考えの上に掲げられたものだ。
もともと授業で認められていた言語は、英語、フランス語、スペイン語の3つだったが、徐々に日本語での授業の実施も認められ、2015年7月には認められたのは10科目となった。
武蔵野大学と千代田女学園が目指すところ
武蔵野大学と千代田女学園は法人を合併し、新たに武蔵野大学教育学部付属の千代田インターナショナルスクールを設置。小中高一貫の国際バカロレア教育を推進する。DPプログラムを設置する予定だ。
同大学の教育学部(教育学研究科)に設置する予定の国際バカロレア教育養成コースと連携することで、教育の質を向上、社会のニーズに合った人材を育成する総合学園へ発展させるという。国際バカロレアの導入で、教育の質の向上とともに、少子高齢化が進む中、選ばれる学校になるための各学校の施策とも言えるだろう。
また桜美林学園(東京都町田市)は昨年9月、小中一貫教育を行う義務教育学校の新設方針を発表している。国際バカロレア機構のプログラムを導入する新設校を2021年の開校を目指して準備するという。
日本のバカロレア認定校は35校
日本の認定校は2015年10月1日時点で35校ある。そのうち学校教育法第1条に規定されている学校は、北は仙台育英学園高等学校、南は沖縄尚学高等学校の12校。第1条校以外の学校は、つくばインターナショナルスクール、沖縄インターナショナルなどの23校となっている。
4種類のプログラムのうちどのプログラムを導入しているかは学校により異なる。認定校について興味がある方は文部科学省のウェブサイトに掲載されている。
今後も桜美林、聖ヨゼフ、武蔵野と導入する学校も増えるだろう。ただ日本語での授業が可能となった今でも問題点がある。内容は現行の学習指導要領と大きく異なるため、整合性、日本の大学入試への対応などが指摘されている。(ZUU online 編集部)