(写真=Thinkstock/Getty Images)
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年初から日経平均株価が大きく調整している。1月20日の終値は632.18円安の1万6416円19銭で取引を終えた。いつ下げ止まるのか分からない状況に、リーマンショックの状況に似ているといった声まであがっている。日経平均の調整は、中国や原油安といった外的要因によるものと考えられるが、米利上げの影響によるハイイールド債や新興国通貨への懸念が大きいだろう。

リスク回避姿勢を強める投資家

2015年12月10日、NYのヘッジファンドのサード・アベニュー・マネジメントが運用するファンド「サード・アベニュー・フォーカスト・クレジット・ファンド」が償還停止と清算手続きに入ることが明らかになった。この報道を受けて、金融市場でのリスク回避の動きは加速した。

同ファンドの純資産は7.9億ドルと1000億円に満たない。ヘッジファンドとしては比較的小規模だ。ハイイールド債のエクスポージャーを多くとっており、特にハイイールド債の中でも格付けの低いトリプルCクラスの債券を組み込み、高い利回りを追求していたため解約希望が殺到したようだ。

米連邦準備委員会(FRB)の9年ぶりの利上げを受けて、信用収縮懸念から、投資家はリスク回避姿勢を強めている。ハイイールド債、特にエネルギー関連企業の社債には売り意向が強いようだ。NYで取引されているSPDRバークレイズ・ハイイールド債ETF(JNK)は2016年1月15日で32.73ドルとリーマンショック後の2009年来の安値を更新している。昨年来高値の2015年2月からは18%の下落となっている。

そもそもこのハイイールド債とはどのような商品性なのだろうか。ここでは、ハイイールド債の基本的な商品について解説していこう。

ハイイールド債の特徴、債券と株の中間アセットクラス

ハイイールド債はジャンク債とも呼ばれる。格付け機関が行う格付けでトリプルB以上の債券格付けを投資適格債と言い、ダブルB以下を投資非適格債またはジャンク債と称する。投信用格付けが低いということは、デフォルトリスクが高いことを意味し、利回りが高く設定される。

2016年1月8日時点では、米国10年債の利回りが2.1%に対し、ハイイールド債のBB格債は6.2%となっており、国債とのスプレッドは410ベーシスポイント(以下、ベーシス;1ベーシス=0.01%)オーバーとなっている。

90年代後半以降のスプレッドの平均は581ベーシス。リーマンショック後は、国債とのスプレッドは一時1800ベーシスまで拡大したこともある。ヘッジファンドならずとも、この利回りは大変魅力的で、ハイイールド債ファンドは世界的なトレンドとなり大幅に資金流入した。

ハイイールド債券が強いのは「景気上昇局面」

2015年3月末で米国ハイイールド債市場の時価総額は1兆3880億ドル(約166兆円)に達していた。日本でもハイイールド債の投信がブームとなった。一時期より残高は減っているものの、米国のハイイールド債の投信で2.4兆円、欧州のハイイールド債の投信でまだ1兆円程度の残高があるようだ。日本の投資信託で12年間純資産残高首位を保っていた三菱UFJ国際投信のグローバル・ソブリン・オープン(通称グロソブ)に変わって、2015年に首位にたったのがフィデリティ投信の「USハイイールド・ファンド」だ。

格付けが低い分、投資適格債に対してプレミアムが上乗せされて取引される。景気上昇局面では、デフォルトリスクは減るため、ハイイールド債は人気化して投資適格債よりも値上がりし、アウトパフォームする。景気後退局面では、デフォルトリスクが上昇するため、ハイイールド債は売られ、投資適格債とのプレミアムは拡大しアンダーパフォームする。したがって、アセットクラスとしては、債券と株の中間的な立場になる。

デフォルト・リスクも高く、流動性も低いため、ハイイールド債はポートフォリオとして、多くの銘柄を組み入れることで、リスクを分散する事が多い。

かつては、ハイイールド債をヘッジファンドが組み入れることは、流動性の見地から簡単ではなかった。しかし、米シェール関連企業などエネルギー企業を中心とした相次ぐ起債、SPDRバークレイズ・ハイイールド債ETFやiShares米国ハイイールド債ETFにより、ヘッジファンドがエクスポージャー(経済的なリスクの程度)を取りやすくなった事が市場の拡大に拍車を掛けたと言えるだろう。

ハイイールド債のエネルギーセクターの比率は14%程度

原油下落とサード・アベニューのファンド清算を受けて、米国でのハイイールド債ファンドの資金流出がとまらない。12月だけで6600億円相当が流出している。日本でも、資金流出が目立っている。12月のカテゴリー別に見ると、純資金流出額上位は第1位が「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」で1112億円となっている。同カテゴリーが1000億円以上の純資金流出額を記録するのは1年1カ月ぶり。

2016年に入り原油価格は一段安となり、WTIの原油先物は30ドルを割り込み12年ぶりの安値となっている。エネルギー関連企業にとって逆風なのは間違いない。米国ハイイールド債ファンド指数におけるセクター別の比率を見ると、エネルギー企業は最もウェートが高いが、それでも14%程度。通信やヘルスケアなども10%を超えている。この程度なら、運用会社がきっちりと、セクターアロケーションとデフォルトリスクを管理していればパニック売りするほどのレベルではないだろう。売られていると言うことは、利回りも上昇しているということ。パニック売りだけは避けた方がいいだろう。

保有しているのならまずファンドの内容を今一度確認しておこう。月次運用報告書などをチェックするとファンドの格付けの平均や分布状況、セクターアロケーションのほか、ポートフォリオのコアとしてどんな社債を保有しているかがディスクローズされているはずだ。

平田和生
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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