「ありがとう」より「うれしい」を使う

同じことをしていても、相手に好かれる人と好かれない人がいます。その違いの1つは言葉遣いにあります。

たとえば、同じように感謝を伝えるときでも、「ありがとう」と言うよりも、「うれしい」と言うほうが、好感度が高まります。心理学では「I(アイ)メッセージ」と言いますが、「私はこう思っている」と自分の内心を開示することが人間関係をスムーズにするのです。

優秀な人ほど、相手の期待に応えるため、相手がどう思っているのかを探る努力をしています。そこで「うれしい」という感情を伝えることは、強い印象を与えることになります。そもそも、多くの人は、誰かの幸せや喜びに貢献できることを誇りに思うもの。口数が少なくても、「うれしい」というひと言で好感度を上げられます。

3つの「珍事件」を用意しておく

雑談をするとき、とくに男性には、自分のこだわりを長々と語ってしまう人が少なくありません。これでは相手は良い印象を持ちません。一方、印象の良い人は、自分の失敗談をよくしています。人間らしい面を知ることができるので、相手が関心を持つのです。

雑談をするなら失敗談(ちょっとした珍事件)。いつでも話せるように、あらかじめ用意しておくといいでしょう。1つだけでは相手の反応が悪いこともありますが、3つも話せば「クスッ」となります。

自己紹介をしたり同僚を紹介したりするときに、キャッチフレーズをつけて紹介することで、雑談の取っかかりを作るという方法もあります。「コピー界のボルトです(コピーを取るのがものすごく速い)」などと紹介すると、相手の印象に残りやすくもなります。

服装は好み3割、役割7割

服装を自分の好みで選んでしまっている人は少なくありません。かといって、新入社員のように、みんながみんな同じ格好をすればいいというものでもありません。職種や接する顧客などによって、ふさわしい服装は違います。

たとえば、同じ不動産業者でも、億ションを販売する営業マンと、賃貸のワンルームの仲介業者では、顧客から信頼される服装や持ち物が違うはず。職場での役職によっても、ふさわしい格好は変わってくるでしょう。

大事なプレゼンの日だからといって、もうくたびれているのに、高級シャツを着る人もいます。大事なのは相手からどう見えるかですから、量販店の安いものであっても、おろしたてを着るべき。値段や好みではなく、相手の期待に応えられるかで選びましょう。

「次はお願いしますね」と年上にごちそうする

新人なら、年上の人にごちそうしてもらうだけでもいいでしょう。けれども中堅になれば、時には年上の相手にも気持ち良くごちそうしたいところ。そういう年下の人を、年上の人はかわいく感じるものです。

もちろん、「おごってあげる」という態度はNG。「今日は出させてください。次はお願いしますね」とひと言かければ、相手は気持ちよく受け入れられるでしょう。「どうしても」と譲らない人の場合は、「実は宝くじが当たっちゃったんですよ」などと言ってみてはどうでしょう。嘘も方便です。相手も冗談だとわかりながら、「それなら」と受け入れてくれるでしょう。

接待や懇親会などの場合は、相手が見えないところで、さりげなく会計をすますのが大人です。

仕草でオーダーする

接待の席でもてなされる側は、もてなす側とお店の人とのやり取りが、意外と気になっているものです。自分には丁寧に接しているのに、お店の人にはアゴで使うような態度を取っているのを見ると、本性をかいま見たような気がしてしまいます。お店の人にも丁寧な接し方をするようにしましょう。

接待の場の雰囲気を乱さないようにするには、オーダーする際など、お店の人を呼ぶときに仕草だけで呼ぶことも大切。手を挙げる、目配せをするなどして、「すみませ~ん!」と大きな声を出さないようにするのです。

どうしても気づいてもらえない場合は、「お願いします」という言葉で呼ぶこと。「すみません」よりもスマートな印象になります。

西松眞子(にしまつ・まこ)Carpe Diem 代表
大学職員を経て、イベントプロデュース会社でマナー・接客指導に当たる。その後、心理学、色彩学を修め、2001年、トータルイメージプロデュースサロン「Carpe Diem(カーペディエム)」を開設。一貫した自己演出理論でイメージコンサルティング分野での第一人者として活躍し、行政機関、金融機関、商社、百貨店、ホテル、美容関連、メーカーなど、幅広い分野でコンサルティング実績がある。企業研修、セミナーも多数実施し、早稲田大学ビジネススクールにおいて社会人向けの印象講座も担当する。

(取材・構成=西澤まどか)(『 The 21 online 』2015年12月号より)

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