マイナス金利
(写真=PIXTA)

日銀が1月29日の金融政策決定会合で導入を決めた「マイナス金利」。通常お金を貸すと利子がついて増えるものだが、「マイナス」金利とはその名前からも分かるように、預けたお金に応じて利子が取られて減ってしまう状態だ。

銀行が日銀に預けるお金にマイナス0.1%

銀行などの金融機関には、融資量に応じて日銀の当座預金口座に預ける義務がある。現状では、決まった額を超えて預けている分については、日銀が年0.1%の利子をつけている。だが2月16日からマイナス金利導入後は金利がマイナス0.1%になる。

ここで考えられる変化は何だろうか。金融機関にしてみれば、お金を預けるほど利子が取られてしまうから、積極的に日銀に預けようとはしなくなるはずだ。つまりマイナス金利が導入されれば、金融機関は日銀にお金を預けるより融資に回すと考えられる。

これまでの量的緩和政策で市中に供給されていたお金が日銀の口座に滞留することを避け、消費者や企業にお金が回す。これによって経済活動が活性化し、デフレが抑制されるというのが、マイナス金利に期待される効果だ。その資金が海外資産の購入につながれば、通貨高が行き過ぎた場合でも、通貨安に転じる可能性も効果として期待できる。

欧州では先行導入 果たして期待された効果は実現するのか

海外では欧州中央銀行(ECB)が2014年から導入。このほかスイスやデンマーク、スウェーデンなども導入している。たとえばデンマークは、EU加盟国だが通貨はユーロではなくクローネだが、欧州の債務危機をきっかけに、デンマークに資金が大量に流れ込み、対ユーロでのクローネ高が続いていた。スイスも、原油高やロシア経済の不安定化などが理由で、安全資産としてフランが買われ、上昇圧力が高まる中でマイナス金利導入を決めている。

マイナス金利にはいくつもの期待効果があるが、これが実現するかどうかは未知数だ。たとえば欧州では企業や個人の資金需要が乏しかったためか、銀行のお金が融資に回っているとは言えないようだ。実際、ECBがマイナス金利を導入以降、ドイツやフランスなどで短期国債の利回りがマイナスとなっている。これは銀行が資金を短期国債へ移したことが原因と考えられる。

またマイナス金利が続くと、預金の金利が下がる可能性が考えられる。実際、1月29日に日銀がマイナス金利導入を決めた直後、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが初めて0.1%を割り込み、0.090%をつけている。これは普通預金の金利にも影響を与える可能性がある。

銀行預金の金利が下がった分、個人も投資に回せば経済の好循環が期待できるが、果たしてうまくいくかどうかは分からない。またマイナス幅が大きくなるようだと、銀行などが積極的に預金を集めなくなることも考えられ、金融機関のバランスシートに影響を与えることも考えられるだろう。(ZUU online 編集部)