おわりに
2000年代中盤以降、韓国の保険会社の海外営業が加速化しているものの、進出国における保険市場の占有率や利益は未だに低い状態が続いている。韓国の製造業がアジア諸国で大きな成果を挙げていることとは対照的だと言える。
韓国の保険会社は、なぜ海外で期待した通りの成果を挙げていないだろうか。その原因としては、外国企業に対する目に見えない差別、韓国国内とは異なる市場環境、自国企業に対する強い選好度(*2)、欧米の既進出企業に対する強い信頼感、商品企画の現地化の失敗、韓国の保険会社に対する低い認知度、製造業と比べて信頼を得るためにより長い時間がかかる点などが考えられる。
アジア各国の生命保険市場は、今後さらなる拡大が見込まれており、先行者の欧米企業と後発走者の日本、韓国、アセアン企業等との厳しい競合が予想される。韓国の保険会社がアジアの保険市場で目標通りの成果を挙げるためには、上記に指摘した課題をどのように解決するのかが今後の鍵を握ると言えるだろう。
特に、先行者の欧米企業の事例を参考すると、ブランド力や信頼度を高めることや商品に対する消費者ニーズを把握するのが大事である。今後、韓国の保険会社が、どのような戦略で海外の保険市場を開拓していくのか引き続き注目していきたい。
(*1)会社別実績は、韓国の連合ニュース2014年6月22日の記事を一部引用している。
(*2)2013年における中国の保険市場の占有率は、中国系の保険会社が生保94.4%、損保98.7%を占めており、2009年の中国系の保険会社の占有率(生保94.8%、損保98.9%)と大きく変わっていない。
金明中
ニッセイ基礎研究所 生活研究部
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