FinTech (フィンテック) によって人々の生活や企業活動が劇的な変化を遂げようとしている。そのひとつが、現金を使わずに買い物や商取引をする「キャッシュレス」だ。私たちの買い物や生活は今後、どうなっていくのか。政府が目指すキャッシュレス社会の未来について解説する。
キャッシュレス比率は年々上昇している
電子マネーやクレジットカード、デビットカードなど現金を使わない決済手段は、レジでの煩雑な小銭のやりとりが必要なく、自宅にいながらネット通販で支払いができるなど、便利な存在だ。経済産業省が2017年8月に公表した資料「キャッシュレスの現状と推進」によると、日本の消費全体における「キャッシュレス」の決済比率は年々上昇しており、2008年は11.9%だったが、2016年には全体の20%に達している。
キャッシュレスは消費者にとっても便利だが、支払いを受ける小売店舗側にとっても現金管理の手間や盗難のリスクを減らせるというメリットがある。さらに、売上データをビッグデータ化することも容易になるので、購買行動を分析することで売上を増やしたり、仕入れの効率にもつながることになる。日本を訪れる外国人観光客にとっても、日本の紙幣を使わずに買い物ができることで利便性が高まり、観光産業や消費にも良い影響を期待できるだろう。
こうしたことから、キャッシュレス化が拡大すれば、日本経済全体の活性化も期待できるのだ。
政府は10年後のキャッシュレス比率倍増を目指す
日本政府も2014年に閣議決定された「日本再興戦略」 (改訂2014) から、2020年に開催される東京オリンピックとパラリンピックに向けて、キャッシュレス決済の普及に向けた対応策の検討を始めている。小規模店舗でも電子マネーやクレジットカード決済ができる端末の導入促進や、安全に利用するためのセキュリティ対策強化、納税など公的分野での電子納付の拡大などについても明記された。
そして、2017年に閣議決定された安倍内閣の成長戦略「未来投資戦略2017 - Society 5.0の実現に向けた改革 - 」では、5項目ある戦略分野のひとつ「Fintech (フィンテック) 」の中で、今後10年間 (2027年6月まで) で、キャッシュレス決済比率を現状の倍となる4割程度を目指していくことが示された。クレジットカード利用時に加盟店に課せられる書面交付義務を緩和し、カード決済のコスト削減につなげるほか、消費データの利活用やレシートの電子化を進めるための環境整備も進めていくとされる。
仮想通貨も法律で決済手段と認められた
日本は、電子マネーを利用したキャッシュレス決済比率は年々増加しているものの、クレジットカードやデビットカードも含めたすべてのキャッシュレス決済となると、海外諸国と比較して高いとはいえない現状がある。
先の経済産業省の資料によると、2015年のキャッシュレス決済比率の国際比較では、日本は18%であるのに対し、アメリカは41%だ。なかには半分以上がキャッシュレスという国もあり、特に中国は55%、韓国が54%と目立って高くなっている。こうした国々と比べれば、日本のキャッシュレス比率はまだまだ拡大する余地が残されているといえるだろう。
現実に、振込みなどの資金移動でも、インターネットバンキングを利用する人が増え、金融機関窓口やATMからの振込みは減少傾向にある。さらに、2016年には資金決済法が改正され、ビットコインなどの仮想通貨が決済手段と認められており、今後は仮想通貨のブロックチェーン技術を用いた決済サービスも拡大していくとみられる。キャッシュレス決済の手段が多様化し、直接現金を持ち歩いたり、受け渡しするようなことがほとんどなくなる日も、そう遠くはないのかもしれない。(提供:大和ネクスト銀行)
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