30年間にわたる平成の時代が終わり、ついに5月から令和の時代が幕を開けた。しかし、実はいまだに昭和の時代の後始末がついていないことがある。それが「昭和100年問題」と呼ばれるコンピュータシステム上のトラブル懸念だ。

平成から令和へと元号が変わる際、西暦ではなく和暦で日付を管理しているデータの処理を巡ってシステム上のトラブルが発生する懸念があった。幸いにも、いまのところ大きな混乱は発生していない模様だが、仮に昭和が続いていたとしたら100年目に当たる2025年にもシステムに混乱が発生する可能性があるという。

早い段階から企業の対応が進行

昭和100年問題,注意
(写真=NanamiOu / Shutterstock.com)

似たようなシステム上のトラブル懸念に、1999年から2000年に以降する際の「2000年問題」がある。こちらは社会問題になるほど大きな関心を集めたが、今回の新元号への移行ではそこまで大きな混乱は見られなかった。これは、システムの多くが西暦で管理されているほか、自治体や企業側でも早い段階から対応を進めてきたからだろう。令和になることが発表されたのは改元のわずか1ヵ月前ではあるが、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立したのは2017年6月。その時点から2019年5月から元号が変わることが確定的だったため、自治体や企業には2年近くの時間的猶予が与えられていた。

そこで、公的機関や金融サービス、公共交通機関といった、システムトラブルが社会的な混乱に発展しかねない分野では、いち早くシステムの改修を進めてきたようだ。仮の新元号名で入念にテストを繰り返したうえで、令和と判明してから最終テストを行ったわけである。

その意味では、2025年が昭和元年から数えて100年目であることは明白で、まだ6年も先の話なので十分に対応できるだろう。しかし、この問題でやっかいなのは、コンピュータ普及の初期段階である昭和の時代に構築されたシステムが現存しうることだ。

いまだに昭和の和暦で日付を管理しているシステムが存在する ?

当然ながら、当時は今と比べてコンピュータの処理能力や記録媒体の容量などが著しく劣っており、データの日付を4ケタの西暦ではなく、2ケタの和暦で管理するほうが合理的と考えられていた。例えば、1985年なら60、1988年なら63といったように昭和の和暦で記録することが少なくなかったという。そして、1989年に平成へと改元された際にもこの管理手法は見直さず、例えば64なら平成1年、65なら平成2年といったように“出力時”に表示が変更されるだけの “付け焼き刃”的な対応を取ったケースが考えられる。

昭和から平成への改元は天皇崩御に伴うもので、対応に充てられる時間も非常に限られていた。見た目では平成の和暦表示になっていても、依然としてシステム内では93、94などといった昭和換算の和暦で管理されている可能性があると予想される。

中小企業や老舗企業は要注意か

では、そのようなシステムが2025年を迎えると、どのような状況に陥るのだろうか ? その前年に99という2ケタの最終局面を迎えているので、リセットされて再び01からカウントされることになる。そうなると、その後の日付処理を巡って誤作動が発生するかもしれない。

それが現実となれば、公的機関の事務処理など一部に混乱が生じる可能性もあるだろう。前述の「2000年問題」では、2000年を迎える時点で日付データを西暦の下2ケタのみで管理していたシステムに誤作動が生じる懸念があった。もっとも、当時は政府主導のもとで対策を進め、さらに年末から年明けにかけて厳重な監視体制が敷かれたため、懸念されていたほど大きな騒動に発展することはなかった。

「昭和100年問題」の対象となる昭和の遺物的なシステムが今なお稼働しているケースはかなり限定的だろう。とはいえ、大手企業のように大掛かりなシステムへの対応が難しかった中小企業や老舗企業などでは、手つかずになっている恐れがある。もし自分の周囲に思い当たる会社があれば、念のために確認してみるのもいいかもしれない。(提供:大和ネクスト銀行

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