年金制度のネガティブなイメージはなかなか拭えない、というのが正直なところだ。会社員の方であれば毎月天引きというかたち厚生年金保険料を納めている。それは同時に国民年金の保険料を納めていることにもなっており、一体自分は年金をいくらもらえるのかと疑問に思う方もいるだろう。

実は厚生年金の支給額の計算は、とても難しい。国民年金は加入の月数がその金額を左右するが、厚生年金は加入期間に加えて所得により異なってくるのである。そこで、今回は厚生年金の受給額の正しい計算方法と、大まかな金額を把握するための計算方法を紹介する。

目次

  1. 厚生年金と国民年金の計算方法の違い
  2. 複雑な厚生年金の計算方法とは
  3. 厚生年金受給額を簡単に出してみる

厚生年金と国民年金の計算方法の違い

まず、比較のために国民年金の支給額の計算方法を紹介する。国民年金の計算方法は、満額に対し納付期限月数を掛ける事で求められる。現在の満額は78万100円である。それに納付月数や免除月などを考慮し計算するだけなので、シンプルなものであると言える。式は次のようになる。

78万100円 × (保険料納付済み期間 (月) + 免除月(※)) ÷ 480か月(40年)

免除月(※)は、「全額免除の月数 × 8分の4」「4分の3免除月 × 8分の5」「半額免除月 × 8分の6」「4分の1免除月 × 8分の7」をそれぞれ計算し、加算する。つまり、国民年金の支給額は所得の寡多に関係なく、支払い期間が金額を大きく左右する要素となっているのがわかる。

一方、厚生年金の計算はこのようにシンプルにはいかない。なぜなら、国民年金は期間のみが金額の変動要因であるのに対し、厚生年金は所得に応じて金額が変わるものだからである。

さらに、所得はそのままの金額が計算に用いられるわけではないという点も、計算を複雑にしている原因だろう。1等級から31等級と言う区分があり、そのどれに該当するかを特定させなければならなのだ。1等級は8万8000円で、31等級は62万円である。納めている保険料もその等級によって計算されている。

それに加えて、平成15年4月以前と以後で計算式が異なってくる。事項で具体的な計算方法を紹介する。

複雑な厚生年金の計算方法とは

この時点で、「難しい」と感じる方は多いだろう。最後に、大体の金額を把握する計算も紹介するので、まずは正確な算出方法に目を通してほしい。

平均標準報酬月額×乗数×平成15年3月までの払込月数+平均標準報酬額×乗数×平成15年4月以降の払込月数

この計算方法を「本来水準方式」と呼んでいる。ひとつずつ解説していこう。

まず、平均標準報酬月額は賞与を除いた給与の平均額である。これは、いわゆる「年収」ではなく厚生年金に加入してからの平均額である。それに加え、その平均額が先ほど触れたどの等級に該当するのかを調べる必要がある。報酬月額は、通勤手当などの各種手当を含んだ金額である点にも注意したい。

次に、乗数の部分を見ていこう。一言で言えば、平成15年4月からその乗数が変更されたのだ。それによってその前後で計算式が異なっている。平成15年以前に勤務していなかった方は、少しシンプルになるだろう。平成15年3月までの乗数は0.007125である。平成15年4月以降の乗数は0.005481である。

平均標準報酬額は賞与を含む所得の平均である。思ったより難しくない、と感じる方もいるかもしれない。しかし、まだ計算は終わらないのだ。

平均標準報酬月額×0.0075×平成15年3月までの払込月数+平均標準報酬額×0.005769×平成15年4月以降の払込月数

これを「従前額保証方式」と呼ぶ。先ほどの式とほとんど同じであるが、乗数の部分が異なっている。この二つの金額を比較し、大きい方の金額が支給額となる。

必要なことは、自身の正確な等級、加入期間を把握すること、計算式に当てはめ正確に計算することである。

厚生年金受給額を簡単に出してみる

この計算の複雑さの原因は、やはり標準報酬額という等級が存在することだろう。なかなか個人で、自身の等級を算出することは難しい。そこで、大体の金額を当てはめ等級を割り出してみる、というのは一つの手である。また、以下のような計算方法もある。

平成15年4月以前の賞与を含まない平均給与 × 900 × 加入年数 + (年収 ÷ 12) × 660 × 平成15年以降の加入年数

これはあくまで概算であるので、参考程度にしてほしい。指示に従い金額を入力するだけのシミュレーションサイトもあるので、正確な金額を知りたい方はそちらを使用してみるのもいいだろう。

ただし、年金制度は変化していくものである。それだけではなく、年金制度の改正などのニュースにも敏感になることが求められる。また、専門家に相談することも選択肢の一つである。不透明感のある年金制度だが、自身の老後は自分で守るという意識で、関心を向けて欲しい。