厚生年金保険は誰もが知る制度だが、理解していると自信を持って言える人は少ないだろう。質問されて答えに詰まる人は決して少数派ではないはずだ。

保険は公的と私的の2種がある

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(画像=PIXTA)

保険には公的保険と私的保険の2つがある。公的保険は国が運営し強制加入である一方、私的保険は公的保険を補完する役割をもつ、企業や団体などが設ける任意加入の保険である。厚生年金保険は前者、公的保険である社会保険に属す。

社会保険は狭義においては健康保険などの医療保険、介護保険、年金保険を指し、広義においてはその3つに労災保険、雇用保険から成る労働保険を含む。厚生年金保険はそのうちの年金保険に、国民年金と同じく含まれる保険である。

厚生年金保険の意義と運営方式

我が国の年金の運営方式として採用されているのが、世代間扶養を実現する「賦課方式」だ。現役世代が払った国民年金と厚生年金の保険料に、国が負担する分を加えて同時期の受給世代に渡す仕組みだ。個人が積み立てた金を個人に返す「積立方式」とは異なる。

現役世代のとき実際に払った保険料は、その時代の受給世代に渡る。けれども、自身が受けとる世代になったときに支給される額は、かつて現役世代だったときに払った保険料額をもとに決まる。

なお以前は現役世代と受給世代のバランスを図りながら保険料が決まっていたが、少子高齢化の影響などもあって現役世代の保険料が高騰する可能性から、2004年に法律が改正された。以後、保険料には上限が定められ、段階的に引き上げられていた(2017年に引き上げは終了)。

厚生年金保険と国民年金の関係

厚生年金保険と国民年金との関係は時にややこしく捉えられがちであるが、家の例で示すとわかりやすい。家は3階建てで、1階部分が公的年金たる国民年金、2階部分が同じく公的年金の厚生年金保険、3階部分が私的保険に相当する。

基本的に自営業者や学生といった立場の人は1階しか利用できず、厚生年金保険加入者である会社員や公務員といった人は1階も2階も利用できる。例えば厚生年金基金など、任意加入の保険に加入している人は3階を利用していることなる。

いずれの立場の人も1階部分、国民年金は適用されるため、これを「基礎年金」と呼ぶ。国民年金では以下のように区分される。

・自営業者などは第1号被保険者
・会社員などは第2号被保険者
・第2号に扶養される配偶者などは第3号被保険者

年金制度において、国民年金は「基礎年金」と呼ばれ、文字通りその基礎となり、20歳以上60歳未満の日本国内に住所を有する全ての人に加入義務がある。そのため会社員や公務員は厚生年金保険の加入者であるが、同時に第2号被保険者という国民年金の加入者としての立場も存在する。

加入できるのは要件を満たす人だけ

厚生年金保険の加入対象は国籍・性別を問わず70歳未満で、事業所で働く対価としてお金を受け取っている人である。会社勤めのサラリーマン、OLはその典型例だ。保険の適用は事業所単位で行われ、株式会社など法人の事業所、もしくは従業員が常に5人以上いる個人の事業所(農林漁業、サービス業などを除く)は、厚生年金保険の適用事業所となる。

法人事業所の場合、事業主が1人で運営していても加入は強制となる。個人の事業所の場合、上記の条件に当てはまらない事業所でも、従業員の半数以上が適用に同意すれば適用事業所になる。

また保険適用されるのは正社員だけではない。パートやアルバイトは、1週間の所定労働時間及び1カ月の所定労働日数、つまり予め働くことが決められた時間と日数が同様の仕事をする社員の4分の3以上であれば適用対象となる。

もしそれに満たなかったとしても、当人が学生でなく、週の所定労働時間が20時間以上、月の賃金が8万8000円以上で、1年以上の雇用期間が見込まれ、常時501人以上が働いている企業に勤めていれば同じく対象となる。なお、500人以下の企業に関しても、2017年4月1日以降、社会保険加入について労使で合意がなされていれば適用されることになった。

比較的短い期間のみ働く人、例えば日々雇われている人や2か月以内の期間だけ使用される人、6か月以内の臨時的事業の事業所に使用される人、所在地が一定しない事業所に使用される人は対象にならない。

保険料の決め方と支払い方法

厚生年金保険料は標準報酬月額、標準賞与額をもとに決められる。前者は基本給に残業手当などを含めた給与額をもとに算出し、状況に応じて改定される。後者はボーナスや賞与など、年に3回以下、一時的に支給される150万円を上限とする金銭であり、製品といった現物も含む。年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象となる。

それぞれに18.3%の保険料率が掛けられ、算出額を合計した金額が保険料となる。ただ保険料の支払いに際しては会社側と労働者側が半分ずつ、9.15%ずつ負担する労使折半という形がとられているため、全額支払うことはない。

保険料は労働者に給与が渡る前に会社側によって天引きされており、会社がまとめて年金事務所に納める。産前産後休業期間中、育児休業等期間中は申し出れば会社と労働者ともに保険料負担が免除される。

他方、保険料は国民年金との違いが顕著に現れる部分でもある。国民年金では収入や所得に関わらず定額だが、厚生年金保険では状況により変わる標準報酬月額に定率を掛けた額になるという点が異なる。

加えて国民年金では保険料を全額、被保険者が直接支払うのに比べ、厚生年金保険では直接支払うことなく、負担も半額となる点も異なる。ちなみに厚生年金保険加入者である会社員などに扶養されている第3号被保険者には保険料負担がない。

厚生年金保険料は実際いくら?

厚生年金保険料の負担額はどれぐらいになるのだろうか。

厚生年金保険の適用事業所に勤める会社員A氏が1年に支払う厚生年金保険料額を確認してみる。A氏が受け取る月給(残業手当など込み)は40万円、ボーナス(賞与)は80万円で夏冬2回とし、標準報酬月額と標準賞与額はこの金額から判断する。

標準報酬月額は、月々の給与を一定の幅で等級として分け、その等級ごとに標準報酬月額を設定した厚生年金保険料額表(2017年9月〜)から導き出す。40万円の給与では等級24、報酬月額39万5000円〜42万5000円の範囲に相当するので、等級24に設定された41万円が標準報酬月額である。41万円にA負担分の9.15%を掛けると3万7515円、1年分なら12を掛けて45万180円であり、これが月々の給与に対するA氏が負担する保険料になる。

標準賞与額は税引き前の賞与から1000円未満の端数を切り捨てた額で、今回は80万円のままとする。80万円にも9.15%を掛けると7万3200円、2回分では14万6400円となり、これがボーナスに対するA氏が負担する保険料だ。それらを足した額、59万6580円が1年間でA氏が支払う厚生年金保険料となる。

参考までに国民年金第1号被保険者のケースも計算してみる。2017年4月〜2018年3月の月額保険料である1万6490円をもとにすると、1年分の支払い額は19万7880円となる。

誰が年金をいくらもらえるのか

年金を受けとることができるのは、ある一定の年齢に達した人、病気や怪我で障害を負ってしまった人、被保険者の妻や夫を亡くしてしまった人などだ。

条件を満たした場合に支払われるものとして、老齢が理由なら「老齢年金」、障害が理由なら「障害年金」、遺族であるなら「遺族年金」がある。この3種が基本的な年金で、国民年金のみの加入者は、3種いずれかの基礎年金を受け取ることができる。また、厚生年金保険の加入者、3種の年金のいずれかにおいて、厚生年金と基礎年金の両方が受け取れる。(条件によっては、厚生年金、基礎年金のどちらか一方の受け取りとなる)、

実際の支給額はいくらほどになるのだろうか。厚生労働省2016年度『厚生年金保険・国民年金事業の概況』を参照したところ、厚生年金保険受給者においては老齢年金14万7927円、障害年金10万2398円、遺族年金8万4694円がその平均年金月額(基礎年金含む)であった。

一方、国民年金受給者の平均年金月額は老齢年金5万5464円、障害年金7万2453円、遺族年金8万2404円と、保険料の差と同様に、支給額でも大きな差があるのが分かる。

多様な老齢年金の受給方法

老齢基礎年金は10年の受給資格期間を満たすと65歳から支給される年金だ。受給資格期間とは保険料納付期間に保険料免除期間(第1号被保険者のみ)と合算対象期間(昔任意加入であった時の加入していなかった期間等)を足した期間で、かつては25年だったが2017年8月1日から10年に短縮された。

老齢厚生年金は老齢基礎年金の受給要件を満たし、かつ厚生年金の加入期間が一定期間ある場合支給される年金であり、ある事情からさらに2パターンに分かれている。1つは60歳から64歳の間に支給される特別支給の老齢厚生年金、もう1つは65歳から支給される老齢厚生年金だ。

前者は60歳だった老齢基礎年金の支給開始年齢が65歳へと引き上げられた際、起こり得る世の混乱を避けるためその給付が決定した。ただあくまで例外的な措置、暫定的な給付であるため、いずれは無くなる予定である。後者は通常の老齢厚生年金であり、老齢基礎年金に合わせて65歳から支給される。

老齢基礎年金と通常の老齢厚生年金の受給開始時期は変更が可能で、65歳より前、60歳から64歳のうちに受け取り始めることを繰上げ受給、66歳から70歳までに後ろ倒しすることを繰下げ受給と呼ぶ。繰上げの場合はひと月ごとに支給額が0.5%減算され、繰下げの場合はひと月ごとに0.7%加算される。

そのほか、60歳以降であれば働きながら在職老齢年金という形でも年金は受給できるが、年齢や給与などに応じてその金額は減ってしまう。

万が一のための障害年金と遺族年金

障害基礎年金が支給されるのは、国民年金の被保険者で障害認定日に1級、2級に該当し、保険料を一定期間納めていた場合だ。一方、障害厚生年金は厚生年金保険の被保険者であった人が保険料納付要件を満たし、障害等級の1級、2級、3級に該当した場合、年金を受け取れる制度で、障害基礎年金よりも保障範囲は広い。また、3級の障害よりやや程度の軽い障害が残ったときに支給される一時金として、障害手当金もある。

遺族基礎年金は国民年金に加入している人か、すでに受給する側にあった人が死亡した場合、遺族に支給される年金である。そのうち遺族基礎年金は死亡者が保険料納付要件を満たしていたとき、その人に生計を維持されていた子か子のある配偶者に支給され、配偶者は妻、夫のどちらでも受け取ることができる。

遺族厚生年金は一定の要件を満たしたとき、死亡者に生計を維持されていた人がもらえる年金だ。子どもがいなくても支給される点が遺族基礎年金とは異なる。(ZUU online編集部)