企業年金を担う厚生年金基金は、ほぼすべてが解散することが決まっている。厚生年金基金に加入していた人の中には「年金がもらえなくなるのではないか」という不安も多い。年金がゼロになることはないが、解散後の年金の取り扱いはどのような解散方法をとるかによって異なる。短期間だけ加入していた場合の扱いもよく寄せられる疑問だ。

企業年金の主役だった厚生年金基金

厚生年金基金
(画像=PIXTA)

厚生年金基金とは、企業が社員の年金を充実させることを目的とした企業年金のひとつである。企業年金は基礎年金や厚生年金などの公的年金に上乗せする私的年金だ。「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「確定拠出年金」と3つある企業年金のうち厚生年金基金は代表的な存在であったが、現在は解散が相次いでいる。

厚生年金基金は老齢厚生年金の給付を国に代わっておこなう「代行給付」を担っており、私的年金でありながら公的要素が強いことが大きな特徴であった。また、国に代わって徴収した保険料に独自の積立金を加算し、スケールメリットを生かした資産運用をすることで、社員に対し厚生年金のみの給付よりも豊富な年金を支給することを可能にしてきた。

しかし、高齢化で年金受給者が増える一方なのに対し、保険料を払う現役世代は減少している上、資産運用の環境が高度成長期に比べて非常に難しくなっている。そのため多くの厚生年金基金では財政状況が悪化し、解散を余儀なくされている。

2014年4月以降新規設立禁止

2012年の“AIJ事件”を覚えているだろうか。国から年金の管理運用を任されているにも関わらず、代行給付をおこなうために最低限必要な資産が足りなくなる「代行割れ」が問題となった事件だ。AIJに限らず、多くの厚生年金基金で約束した年金額を支給できないところが続出し、社会問題化した。

この状態を受けて、国は2014年4月1日以降の厚生年金基金の新規設立の禁止を決定した。早期に解散すれば有利になる特例が設けられたこともあり、2015年時点には471基金のうち8割に該当する基金が解散する方針であることを表明している。長く従業員の福利厚生に貢献してきた厚生年金基金は、「お役御免」となったのである。

解散となってしまった厚生年金基金の加入者の年金はどうなってしまうのだろうか?2013年3月末時点では厚生年金基金の加入者数は420万人と少なくない。年金がもらえなくなってしまうのではという不安の声も多いが、厚生年金基金が解散しても年金の1階部分の老齢基礎年金と2階部分の老齢厚生年金は予定通り支給されることはおさえておこう。3階部分の企業年金がどうなるかについては、どのような解散方法を採用するのかによって異なる。

年金はもらえる?

存続が困難になった基金がとるべき選択肢としては、「解散」と「代行返上」がある。

1.解散して資産を分配

基金のすべての業務をやめてしまうのが解散だ。国の代わりに行っていた代行部分の年金原資は国に返上し、余った財産は加入者や受給権者の一時金として分配する。基金はその後消滅する。これまで基金が代行給付していた老齢厚生年金は国からきちんと給付されるので心配ない。ただし企業独自の上乗せ給付は原資を一時金として分配してしまっているので、年金として支給されることはない。

なお、5年間の時限措置である「特例解散」を選択した基金の加入者には上乗せ部分の一時金の支給もない。なぜなら、特例解散は代行割れをした基金が対象だからだ。代行割れの基金は代行返上の際に国へ返す年金原資が不足している状態なので、加入者の年金に上乗せできる状態ではない。特例により返却額を減らしてもらう代わりに、加入者への上乗せ給付は全額停止だ。企業と折半とはいえ基金に支払ってきた積立金は、まるまる大損というわけだ。

2. 代行返上

比較的財政に余裕がある基金が選択できるのが代行返上だ。国の代わりに行っていた老齢厚生年金の代行部分の年金原資を国に返上し、上乗せ部分は確定給付年金(DB)に移行する。確定給付年金は確定拠出年金とは違い公的年金のように給付額が決まっている年金だ。この方法なら、基礎年金や厚生年金は国から支給され、企業年金も金額に変更はあるものの制度は残ることとなる。いったん解散してからDBを導入するケースと異なり、これまでの掛け金がムダになることはない。

短期間のみ加入していた場合は

厚生年金基金に短期間だけ加入していた人は「中途脱退者」と呼ばれる。中途脱退者への年金給付は、国ではなく企業年金連合会に引き継がれる。どのくらいの期間加入していたら中途脱退者になるのかは基金によって条件が異なるが、一般的には10年未満の加入者が企業年金連合会に引き継がれる対象だ。厚生年金を受け取れる年齢になった際、上乗せの企業年金も受け取れる。

加入期間が10年以上または55歳以降加入期間がある場合など、企業年金連合会の引継ぎの対象とならない場合は、先ほどのように解散か代行返上か、元の基金が選択した方法に従うことになる。

中途脱退者に対しては、基金及び事業者は移換について説明をする義務があり、企業年金連合会からは「引き継ぎのお知らせ」の通知が届くはずである。なお、日本年金機構が提供する「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」の情報は、国が支給する年金の見込み額なので、厚生年金基金や企業年金連合会が支給する年金が含まれていないので注意したい。(篠田わかな フリーライター)

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