③「シニア」による起業の傾向

一方、シニアによる起業の傾向としては、(1)起業前の経験、人脈を活かした起業 (2)動機は、収入よりも経験(3)黒字基調の割合は低い という点です。 日本政策金融公庫による「シニア起業家の開業」というレポートによると、 起業した業種に関連する仕事の経験年数はシニア層では平均17.8年、30年以上経験したという割合が約3分の2を占め、起業前の経験が活かせる業種で起業している傾向が伺えます。

また、シニア起業家の開業動機の上位を占めるのは、「仕事の経験・知識を活かしたい」というのがトップで、次に「社会の役に立つ仕事がしたい」という理由になります。特に「社会の役に立つ仕事がしたい」はシニア層では他の世代と比べて、約2倍の回答数を集めていることから、シニア層特有の起業理由であることが伺えます。 また、黒字基調の割合は全体の54%であり、他の年齢層に比べると低くなっている傾向があります。

シニア起業家の開業(日本政策金融公庫):
http://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_121225_1.pdf


④ 「若者」による起業の傾向

「若者」による起業については、女性、シニアと同様に着実な事業を選択する傾向にあります。さらに企業数が増加している要因としては、SNSや起業家支援ネットワークの拡充、貸しスペースやクラウドサービスの充実など、起業に必要な設備や人脈に関するハードルが下がってきたことが挙げられます。


⑤「ローリスク」で「やりがい」重視

「女性」「シニア」「若者」の起業に共通する傾向として、「ローリスク」かつ「やりがい重視」が挙げられます。これは2000年前後のビットバレーに代表されるベンチャーブーム、2005年のホリエモン主導のベンチャーブームでの株式公開による一攫千金を狙う時期と異なる傾向を示しています。

筆者は、2000年前後にビットバレーのベンチャーで学生インターンとして働いていましたが、その会社の壁には「目標、2005年株式公開!」というスローガンが掲げられ、増資に伴い、ストックオプション目当ての人が大勢やってきました。しかし、今回の創業融資制度を使う起業家は、キャピタルゲイン目当てよりも、「自分らしく生きたい」「社会との接点を持ちたい」という、収入ではない動機が多いようです。過去のベンチャーブームはバブル崩壊により無くなりましたが、今回はより足の長いものになるのではないでしょうか?