大阪人に学ぶ、世界に通じるジョーク

では、日本人も同様に、アメリカンジョークを勉強すれば、笑いを取れるのだろうか。

「残念ながら、ウケる可能性は低いと思います。日本人なのにがんばってアメリカンジョークを真似してもぎこちない。語っている本人も面白いと思っていない可能性が大きいので、双方にとってお寒い空気になります」

大島氏が勧めるのは、ジョークをベースに、日本の笑いに組み替えることだ。

「アメリカ人のジョークの多くは、第3者目線から語る形式。ですが、日本人の笑い話は、自分の体験談が基本。そして、落語のように1人何役もこなす会話形式が得意です。それがいかにも日本的と受け取られるので、外国人にウケやすいのです」

さらに、苦手な英会話すらもおいしいジョークに転換可能だ。

「揶揄される日本人の欠点をネタにしてしまうのです。『英語が下手なのは、教科書のせい』と開き直ってジョークにすると、自信のある人と思われ、下手な英語も許される可能性が。

また面白いことに、日本社会の中で、アメリカ人の使うジョークに感覚が近いのは、大阪の商人だという。

「お上のいる江戸はタテ社会でしたが、商人の町である大阪はヨコ社会。上下関係よりも、ジョークで人間関係を和ませるコミュニケーションが発達しました。英語ではよく『Joking means selling』と言います。『何かを売りたいときはジョークを言わなきゃ』という意味ですが、まさに大阪人の感性です」

もともと笑いの感度は高いはずの日本人。世界のお笑い感覚をつかめば、ユーモアセンスで世界の人の心をつかめる日も、そう遠くはないはずだ。

大島希巳江(おおしま きみえ)神奈川大学教授
1970年、東京生まれ。高校卒業後、渡米し、コロラド州立大学ボルダー校を卒業。青山学院大学大学院国際コミュニケーション修士、国際基督教大学大学院教育学(社会言語学)博士を得て、神奈川大学外国語学部教授。英語落語家。著書に『日本の笑いと世界のユーモア』(世界思想社)、『自分を印象づける英語術』( 研究社)など。

(取材・構成:麻生泰子 写真撮影:長谷川博一)(『 The 21 online 』2016年2月号より)

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