アメリカでウケる「日本語ジョーク」とは?
日本の笑いとツボが違うアメリカンジョーク。しかし、この笑いの感覚の違いを学ぶことは、英会話の力を伸ばすのに役立つ。そこで、この違いを学ぶと同時に、外国人にウケる英語の話し方を、異文化コミュニケーションを専門とし、英語落語で海外に通じる日本の笑いを研究する大島希巳江教授にうかがった。
アメリカンジョークは「おもてなし」だった!?
アメリカンジョークを面白くないと感じる日本人は少なくない。その1つに、次のような理由があげられると大島氏は語る。
「民族的・文化的に同質性の高い日本に対し、アメリカは多民族多文化社会だからです。
そもそも『笑い』とは、常識からの逸脱や意外性から生じるのですが、みんな同じであることが〝常識〟の日本に対し、アメリカは人種のるつぼ。みんな違って当然なので、意外性が少ないのです」
だからこそ、アメリカの笑いは〝万人受け〟するシンプルで無難なネタが好まれる。男女のすれ違いやお金の話、与太郎話などは世界共通のネタだそうだ。
「日本のように社会で共有する常識の層が厚い社会を『高コンテクスト(文脈)社会』といいます。日本人同士で培ってきた常識をベースにしているので、少ない言葉で、笑いを享受できます。
一方、アメリカは『低コンテクスト社会』。誰にでもわかるように順を追って説明するため、日本人にとっては、くどいと感じるかもしれません」
しかし、残念ながら日本は「ユーモアのある民族」とはみなされていない。それはなぜか。
「日本人は、初対面でジョークをあまり言いません。関係性を維持する手段として、笑いを利用するからです。一方で、アメリカ人のジョークは『おもてなし』。プレゼンが顕著です。
日本人は、生真面目に自社商品の魅力や訴求点を語りますが、これはNG。アメリカ人は、20分のプレゼンのそこかしこにジョークを仕込みます。場の空気が和み、聴き手の好感度と集中力が高まることを狙っているのです」
グローバル時代に「笑い」は最強の武器
日本では初対面でいきなり、「笑い」を誘うのは不謹慎だと考えられてきたが、さまざまな国や文化的背景を持つ者同士がビジネスをするためには「挨拶代わりの笑い」は欠かせない。
「なぜなら、初対面のジョークは、自分が敵ではないことの証明だからです。人は笑うことで相手に好意を持つ生き物。文化的、民族的な隔たりを一気に乗り越える力があります」
巧みにジョークを盛り込むアメリカ人は、実にジョークをよく勉強しているのだとか。
「アメリカの書店に行くと、ジョーク&ユーモアのコーナーが必ずあります。そして、彼らは持ちネタをつねに5つ、6つ忍ばせています。
イギリスはアメリカに比べ、同質性が高い社会ですが、同様に笑いを好みます。首相のスピーチは、翌日にはジョークの的。王室についても、辛辣なジョークが飛び交います。ダイアナ妃が亡くなった翌日にはジョークができるほどです。
それを、彼らは悪いことだと思っていません。むしろ、笑うことで悲劇を乗り越え、前に進もうとする精神なのです」