3.住宅サイクル(住宅価格、販売、在庫、新規着工)

◆住宅価格は上昇傾向

中国では住宅価格の上昇傾向が続いている。新築分譲住宅価格(除く保障性住宅 )の推移を見ると、図表-8に示したように2014年秋には前月比で上昇した都市はゼロと全ての都市で下落していたが、2015年には徐々に反転上昇する都市が増え、2016年3月には9割弱にあたる62都市で前月より上昇することとなった。

中国国家統計局は70都市平均の価格指数を公表していないが、全体的傾向を捉えるため当研究所で単純平均したところ、3月は前月比0.87%上昇と2015年4月をボトムにして3.4%上昇している。2014年4月のピークに比べるとまだ3.3%低い価格水準にあるものの、ちょうど「半値戻し」を達成した水準にあるといえるだろう(図表-9)。

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◆住宅販売も増勢を強めた

住宅価格が上昇している背景には、住宅購入制限の緩和と金融緩和により、住宅販売が増勢を強めたことがある。2015年には住宅を購入する際の戸数や戸籍などの規制の緩和が各地で相次ぎ、住宅ローンを借りる際の頭金比率の条件も緩和されていった。

また、2014年11月以降、中国人民銀行(中央銀行)は6度に渡って利下げを実施、預金基準金利(1年定期)は当初の3.0%から現在の1.5%へと1.5ポイント引き下げ、貸出基準金利(1年以内)も当初の6.0%から現在の4.35%へと1.65ポイント引き下げた(図表-10)。それに伴って住宅ローン金利が低下して、住宅ローン残高は高い伸びを示した(図表-11)。

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その結果、住宅販売(面積)は2014年には1割近い前年割れだったが、2015年4月には前年を上回る水準に回復、その後は住宅在庫の高さを懸念する声が上がって一旦は息切れしかかったものの、2016年1-3月期には前年同期比35.6%増と再び勢いを取り戻した(図表-12)。

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◆中国全体で見ると住宅サイクルは好循環入り

住宅販売が増勢を強めたことで住宅在庫の増加も一服した。2016年3月末の販売待ち在庫(住宅)は4億5,983万平米と高水準だが、前年比では7.4%増と住宅在庫の増加には歯止めが掛かってきた(図表-13)。住宅着工も増え始めており、新規着工は2015年の前年比14.6%減から2016年1-3月期は同14.8%増へとプラス転換している(図表-14)。

従って、住宅販売が増勢を強め、住宅価格は上昇、在庫は減って新規着工が増えていることから、中国全体で見ると住宅サイクルは好循環に入ったといえるだろう。

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