◆主要都市の空き家数・空き家率
(1)西日本の主要都市で相対的に高い空き家率
2013年の主要21都市の空き家率をみると、全般的に東日本よりも西日本の空き家率が高い傾向が見られる(図表-20)。主要都市で空き家率が最も低い市はさいたま市の9.9%で、最も高い市は大阪市の17.2%だった。2008年~2013年の5年間に最も空き家が増加したのは、東京都区部(+4.3万戸の増加)で、最も減少したのが仙台市(-2.5万戸の減少)だった。
これら主要都市の所有関係別・建て方別の空き家率*を計算すると、持家系一戸建ての空き家率*や借家の共同住宅の空き家率*と比べ、持家系共同住宅の空き家率*で都市間格差の大きさが際立っている(図表-21)。なお、借家の共同住宅では、仙台市が11.7%と突出して低い空き家率*だった。
(2)東京都区部
東京都区部の2013年の空き家数は2008年の54.5万戸から2013年に58.7万戸に+4.3万戸の増加となった(図表-22)。このうち、賃貸用の非木造共同住宅等(*11)は+6.4万戸の増加で、都区部全体の空き家数の増加(+4.3万戸)を2万戸以上、上回っている。なお、持家系の共同住宅等は-3.7万戸の減少だった。
持家系の空き家の5年間の変化を区別にみると、一戸建ては大田区と江戸川区でのみ顕著な増加となった一方、非木造共同住宅等は多くの区で減少しており、その中で世田谷区の空き家のみが大幅な増加だった(図表-23)。一方、賃貸用の非木造共同住宅等の空き家については、大田区や世田谷区でなど多くの区で増加が見られた。
2013年の東京都区部の空き家率は11.2%だったが、このうち、江東区が7.8%で最も低く、豊島区が15.8%で最も高かった(図表-24)。
東京都区部の所有関係別・建て方別の空き家率*を計算したのが図表-25である。ここで特徴的なのが、持家系一戸建ての空き家率*が都心部の千代田区と中央区で高いことである。非木造共同住宅等の空き家率*を持家と借家とで比較すると、世田谷区以外の全ての区で借家が持家の空き家率*を上回っている。
(3)札幌市
札幌市の2013年の空き家数は14.2万戸で、2008年と比べ6.6千戸の増加だった。このうち空き家の増加数が多かったのが持家系の共同住宅(+5.6千戸)と持家系の一戸建て(+4.4千戸)で、賃貸用の空き家は全体で-3.3千戸の減少だった(図表-26)。
区別の空き家率をみると、厚別区、手稲区、清田区(*12)などで低く、中央区で高かった(図表-27)。区別の格差は5.9%から20.3%と比較的大きな格差があり、地域別に住宅の需給ギャップがあるものと思われる。非木造共同住宅の空き家率*を計算すると、中央区では持家で13.7%、借家で24.4%だった。
(4)名古屋市
名古屋市の2013年の空き家数は16.8万戸で2008年の14.7万戸から+2.0万戸の増加だった(図表-28)。空き家数の増加は、賃貸用の非木造共同住宅等で+1.6万戸の増加と多く、持家系の一戸建ての空き家が+3千戸の増加だった。
名古屋市は区別の空き家率格差が小さく、ほぼ11%から15%の範囲に収まっており、瑞穂区で最も空き家率が高く、緑区で最も低かった(図表-29)。非木造共同住宅の空き家率*をみると、借家では区別の格差が小さい一方、持家では中川区の5.5%から北区の15.5%まで比較的大きな差が見られる。
(5)大阪市
大阪市の2013年の空き家数は28.1万戸で2008年の25.5万戸から+2.6万戸の増加だった(図表-30)。空き家数は賃貸用の非木造共同住宅等で+1.6万戸の増加で、賃貸用の木造共同住宅が+5千戸、持家系一戸建てが+4千戸の増加だった。
区別の空き家率は、鶴見区が6.2%と低く東住吉区と西成区が23.8%で最も高かった(図表-31)。各区全体の空き家率と借家の非木造共同住宅の空き家率*が非常に近い数値になっており、中央区や北区、西区などの都心で、借家の非木造共同住宅の空き家率*が相対的に低い水準にある。
(6)福岡市
福岡市は主要都市で唯一、2008年から2013年に空き家数が減少した都市である。2013年の空き家数は10.4万戸で2008年の11.7万戸から-1.2万戸の減少だった(図表-32)。空き家数の減少は、賃貸用の非木造共同住宅(-1.0万戸の減少)、賃貸用木造住宅(-2千戸の減少)、持家系共同住宅(-2千戸の減少)の減少による。賃貸を中心に共同住宅の需要が増加しているようだ。
区別の空き家率は、西区で7.9%と最も低く、中央区が14.7%で最も高かった(図表-33)。博多区では、持家の非木造共同住宅の空き家率*が4.8%と非常に低い水準にある。西区では借家の非木造共同住宅の空き家率*が7.8%と非常に低く、賃貸共同住宅への需要の強さがうかがえる。
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(*11)住宅・土地統計調査の市町村編では、建て方別の空き家区分として「一戸建て」と「長屋建て・共同住宅・その他」の二区分のみの開示となっているため、以下の主要都市別では、一戸建てと、一戸建て以外は共同住宅等として計算・表現する。
(*12)清田区では借家の木造共同住宅等の空き家率も19.5%と札幌市内の区で最も低く、共同住宅への需要が相対的に強い状況にあるようだ。
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