◆借家の空き家率は横ばいで推移
次に所有関係別に空き家の状況を概観する。空き家は図表-3で見たように4区分されて調査されている。本稿では所有関係別で区分する場合、空き家を(1)賃貸用の空き家と、(2)それ以外の空き家に分け、それ以外の空き家((2))を「持家系の空き家」と表現することとする(*4)。
2013年時点で持家系の空き家数は390万戸、賃貸用の空き家は429万戸あり、賃貸用の空き家が全体の52.4%を占めている(図表-4)。
賃貸用の空き家の構成比は1998年の61.1%から低下が続いており、これは持家系の空き家の増加率の高さが理由である(*5)。2008年~2013年に、居住世帯がいる持家住宅の増加率が6.1%であるのに対し、持家系の空き家の増加率は13.4%であった(図表-5)。
同様に居住世帯がいる借家住宅の増加率が4.2%であるのに対し、賃貸用空き家の増加率はそれを下回る4.0%だった。
ここで、近似的にではあるが持家系と借家の「空き家率*」(*6)を計算すると、持家系の空き家率*は2008年の10.2%から2013年には10.8%に上昇する一方、借家の空き家率*は同期間に18.8%から18.8%へと横ばいの推移であった(図表-6)。
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(*4)本稿の「持家系の空き家」には、(1)二次的住宅と(2)売却用の空き家、(3)その他の空き家が含まれる。
(*5)前項で記述したように、近年の持家系空き家の増加の多くは「その他」の空き家の増加による。
(*6)持家系および借家の空き家率の計算において、分母となる持家系と借家のそれぞれの住宅総数は、「居住世帯のある住宅」+「空き家」+「一時現在者のみの住宅」+「建築中の住宅」で計算することになる。しかし、「一時現在者のみの住宅」と「建築中の住宅」について持家と借家の区分ができないため、本稿ではこれらを分母から除外して、「居住世帯のある住宅」+「空き家」を分母として近似的に空き家率を求め、これを「空き家率*」と表現することとした。2013年に「一時現在者のみの住宅」と「建築中」の住宅は、住宅総数の0.5%(33万戸)を占めており、これらが持家と借家に等分される場合、2013年の持家系空き家率は10.8%(近似計算(持家系空き家率*)では10.8%)、借家空き家率は18.7%(近似計算(借家空き家率*)では18.8%)となる。なお、居住世帯ありの住宅で所有関係が不詳の住宅が142万戸あり、この不詳分も持家と借家の分母から除かれている。同様の問題は、建て方別においても発生するため本稿では所有関係と同じ対応をとる。
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◆一戸建ての空き家率が上昇
住宅の建て方別(*7)に空き家数をみると、2013年に一戸建ての空き家が300万戸、長屋建ての空き家が45万戸、共同住宅の空き家が471万戸、その他の空き家が3万戸となっており、建て方別にみると共同住宅の空き家の構成比が57.5%を占めている(図表-7)。
2008年から2013年までに一戸建ての空き家の増加率は+19.8%に達し、共同住宅の空き家増加率の+1.9%を大きく上回っている(図表-8)。これは後に見るように地方圏での増加が大きく影響している。なお、居住世帯のある一戸建て住宅の過去5年間の増加率は+4.2%で、居住世帯のある共同住宅の増加率は+6.8%だった。
所有関係別と同様に、近似的に建て方別の空き家率*を求めると、一戸建ての空き家率*は2008年から2013年に8.4%から9.5%に上昇、長屋建ては23.8%から26.1%に上昇、共同住宅は18.3%から17.6%へとわずかに下落が見られた(図表-9)。
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(*7)住宅・土地統計調査の用語解説によると主な住宅の建て方は次のように説明されている。「一戸建」一つの建物が1住宅であるもの。「長屋建」二つ以上の住宅を一棟に建て連ねたもので、各住宅が壁を共通にし、それぞれ別々に外部への出入り口を持っているもの。「共同住宅」一棟の中に二つ以上の住宅があり、廊下・階段などを共有しているものや二つ以上の住宅を重ねて建てたもの。
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◆持家系一戸建ての空き家率が上昇
より細かく、所有関係別・建て方別の空き家をみていく。
2013年の空き家数819.6万戸のうち、最も高い構成比を占めるのが賃貸用の共同住宅の空き家で、空き家総数の45.7%を占め、次いで持家系の一戸建ての空き家(同33.6%)、持家系共同住宅の空き家(同11.8%)と続いている(図表-10)。
これら主要3区分のうち、空き家数の増加が顕著なのは持家系の一戸建ての空き家で、1998年には139万戸(構成比は24.2%)だったのが、2013年には275万戸(同33.6%)へと増加している(図表-11)。
区分別増加数では、2008年~2013年に最も増加したのが持家系の一戸建て(+51.0万戸)で、持家系の共同住宅は-6.4万戸の減少、賃貸用共同住宅は+15.3万戸の増加であった(図表-12)。
なお、賃貸用共同住宅の空き家数が大きく増加した2003年~2008年は、不動産バブルとも呼ばれる不動産市場の好況に加え、住宅専業J-REITが誕生するなど、賃貸用マンションが多く建設された時期であった。
前節までと同様に近似的な数値として、所有関係別・建て方別に空き家率*を求めると、持家系の一戸建ての空き家率*は1998年の5.7%から2013年には9.5%まで大きく上昇している(図表-13、14)。
一方、同じ持家系でも共同住宅では同期間に18.2%から15.0%へと下落し、借家の共同住宅では17.3から19.2%へとわずかな上昇となっている。