「業界全体で人材が不足している」と言われるFinTech。金融×ITを活用した新たなサービスや製品の提供による革新を、スタートアップが中心になって進めているが、人材難という側面もあるのだ。
ITについての知見やノウハウだけでなく、厳しい規制にも向き合わなければならない一方で、技術にも社会にも目配りできる組織の構築が急がれる。海外では流動的な人材が行き来する一方で、雇用慣行の違いなどから、日本では優秀な人材がスタートアップにはなかなか移らない傾向もあると言われており、共通の課題となっている。
実際、次のイノベーションのタネと目され、FinTechのバズワード化の様相も呈していた一方で、ビジネスや事業となるには課題は山積。そんなFinTech企業にとって、真価を問われる時代に、必要なのはどんな人材なのだろうか。
大きなこの疑問に今回、答えるのは、モバイル決済システムの開発、提供を手掛けるコイニー株式会社。同社の井尾慎之介取締役FinTech事業開発担当にFinTech企業で働くこととは、またFinTech分野で求めている人材についてお話しを伺った。求める人材像について紹介する。
ファイナンスの「厳しさ」と、ネットの「ユルさ」が特徴のコイニー
まずは井尾氏を簡単に紹介しよう。同氏はペイパルで働いた経験を持ち、同社でコイニーの佐俣奈緒子代表取締役社長と出会ったという。井尾氏自身は、富士通でのプロダクトマーケティング職や、マイクロソフトでのマーケティング職を経験し、テクノロジー企業のスタートアップなどを経験し、ペイパルやテスラといった先進的な会社で働いた経歴を持つそうだ。
その井尾氏に、「FinTech企業で働くこと」や「活躍できる人材」について尋ねる前に、まず業界の特徴を説明してもらった。同氏によれば、モバイル決済システムを提供するということで、コイニーは、フィナンシャルサービスを作る上での制限が大きく、セキュリティやコンプライアンスの対策にも、より厳密な取り組みが求められる。
他方で、同社は、自社をあくまで「テクノロジー企業」だと位置付けていることから、ITやインターネット企業に似ており、和やかな雰囲気だという。オフィスのロビーにはDJブースも設置されており、社員が集まりパーティーを催すこともあり、「テクノロジーベンチャーらしい」側面を象徴しているといえそうだ。
またコイニーの「理想の組織」にもそうした姿勢がにじみ出ており、井尾氏は「とにかく指示を少なくし、指示のない組織になっていこうとしている」と話す。ルールに従って動くのではなく、社員それぞれが自分の考えで動いていく。そんな組織が理想だという。結果として、縦に大きな組織にならず、ボトムアップで意見が出され、それを救い上げていく仕組みを整備していく方向に向かっているということだ。