大手グローバル企業が翻訳を外注する理由とは?

(写真=The 21 online)
(写真=The 21 online)

――法人にターゲティングをしているのは、サービス開始当初からですか?

ロメイン 実は、サイトを立ち上げたときは個人向けでした。ファイルをアップロードしたりテキストを投稿してもらったりする、単純なサイトだったのです。

その後、翻訳する文章のボリュームが多い法人にターゲットを変えました。営業チームを作り、法人のお客様が利用しやすいように、お客様のプラットフォームやシステムに埋め込むAPI(アプリケーションプログラムインターフェース)も開発しました。わざわざ当社のサイトに来ていただかなくても、お客様のサイトの管理画面から、翻訳先の言語を選択してクリックするだけで、当社に翻訳を発注することができるようにしたのです。

――法人への営業活動は、どのようなことをされているのですか?

ロメイン 米国と欧州についてはシリコンバレーの拠点が担当していて、電話やeメール、スカイプなどだけで営業活動ができています。しかし、日本では直接顔を合わせることが重要ですから、訪問して、資料をもとに会議室で話をして、という、一般的な日本企業と同じ活動ですね。

収益で言うと日本が4割くらい。その他が米国と欧州で、米国と欧州の比率は時期によって変動します。

――御社のサービスを利用している日本の法人顧客には、パルコやJTB、東洋経済など、さまざまな業種・業態の企業が名を連ねています。とくに多い業種・業態はあるのでしょうか?

ロメイン 今、フォーカスしているのはeコマースとトラベル、それに社内で「カジュアルメディア」と呼んでいるカテゴリーです。

eコマースでは、商品説明の翻訳などで利用していただいている他、欧州のオークションサイトや中古品販売サービスのグローバル化のサポートもしています。

トラベルについては、2015年1月にJTBビジネスイノベーターズさんと一緒に『gengo×JTB』というサイトを立ち上げることもしました。訪日外国人を受け入れる宿泊施設のための翻訳サービスで、「靴を脱いでください」や「トイレはあちらです」といった案内、朝食のメニューなどの翻訳の依頼が来ています。

カジュアルメディアというのは、たとえば東洋経済のように、それほど専門用語が多くない一般向けの記事を掲載しているメディアのことです。記事の翻訳のために当社のサービスを利用していただいています。

当社が受けている案件全体の約6割は100文字以下の短いものです。問い合わせのメールの翻訳も多いですね。

――すでにグローバルに活動している大手企業も御社のサービスを利用しています。そうした企業でも翻訳をすべて自社ですることはできないということでしょうか?

ロメイン 私はソニーでエンジニアとして4年間働いていたのですが、開発の仕事をしながら、翻訳の仕事も同僚に頼まれてやっていました。そして、ある日気づいたら、なぜか翻訳の仕事のほうが多くなっていた(笑)。今でも、グローバルな企業では、社内にいるバイリンガルの方や外国語ができる方が翻訳をしているケースが多いと思います。翻訳をする部署を設けている企業もあります。ただ、それが本当に効率的なのかというと、必ずしもそうではないでしょう。当社に依頼していただくほうが、スピードやコスト、スケーラビリティの面で良いケースもあると思います。

対応できる言語の数の面でも、当社に依頼していただくことのメリットがあると思います。グローバルな企業でも、4~5カ国語なら対応できても、当社のように37もの言語に対応するのは難しいでしょうから。

――ちなみに、最も需要の多い言語のペアはなんですか?

ロメイン 日英ですね。日中も増えています。フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語といった欧州の言語と英語のペアも多い。最近はオランダ語も増えています。先ほど少し触れた欧州のオークションサイトがオランダにあるからです。オランダ語から英語に翻訳し、そこからさらに複数の欧州の言語に翻訳しています。

タイからの訪日ビザが緩和されたときには日本語とタイ語のペアの需要が急増するなど、そのときどきの事情によっても左右されます。