英国のEU離脱を受け、ドイツ、フランス、オランダでも国民投票が実施される可能性が現実味を帯びてきた。

ドイツやフランスといったEU加盟国からの猛反対を押し切り、6月23日を「独立記念日」に塗り替えた英国。最高潮に達した国民の不満と英国人としての誇りが、勝利という形で世界中に知らしめられた1日だった。

そうした英国人の底力に続けとばかりに、以前から各国で見え隠れしていた「反EU」の動きが活発化し始めている。どうやらEUの崩壊は、英国民投票以前から始まっていたようだ。

ドイツ「シェンゲン圏はすでに崩壊」

今年3月、2013年に発足したばかりのAFD(Alternative For Germany)ドイツ政党が、3つの地域議会で61議席を獲得するという異例の事態が起こった。

移民を無制限に受け入れるメルケル首相に対する国民の反発が、AFDへの人気に火をつけたものと思われる。

ドイツには過去1年間で110万人の移民が押し寄せている。そのうち30万人が支援を約束されたアサイラム・ビザを与えられている。

メルケル首相の「支援の手」が納税者に課す支援金は、2017年までに総額360億ドル(約3兆6803億円)に達すると見込みだ。

AFDのベアトリクス・フォン・シュトルヒ副議長は、「シェンゲン圏はすでに崩壊している」というコメントとともに、「国民には自国の運命を決める権利がある」と主張。離脱の是非を問う国民投票の実施を求めている。

仏、独、蘭、北イタリアでも「国民投票を」

一方、Brexitの影響を最も受けるといわれているフランスでは、2017年のフランス大統領選にも出馬している国民戦線の党首マリーヌ・ル・ペン氏が、早い時期から国民投票の実施を熱望していた。

4月に行われた世論調査では、フランス国民の40%がBrexitを支持していたことなども明らかになっている。

また反移民派として知られるオランダの自由党の党首、ゲールト・ウィルダース氏も、英EU離脱決定直後に「Nexit(オランダEU離脱)」の国民投票を求める意向を表明。

北イタリアでも同様の声があがっている。

離脱ドミノを引き起こすか?

世界第5位の経済大国を失うことになったEUだが、「英国を撤退する企業を自国に取りこめる絶好のチャンス」と、ポジティブに受けとめる意見も多い。

英国は近年すでにEU内で孤立した立場にあり、「EUに不協和音をかなでる要因」として見られていた。

ミシェル・ロカール前フランス大統領は一昨年、「すべてを壊す前に英国はEUから立ち去るべきだ」とコメントしている。EUにとって英国は「要求と不満の多い高慢な国」となりつつあったようだ。

しかし国益を重視する政府と国民の声には、大きなへだたりがつきものだ。それが最もわかりやすく示された例がBrexitである。

EU議会はそのへだたりが表面化し、「離脱のドミノ作用」を引き起こすことを懸念しているという。(アレン・琴子、英国在住のフリーライター)

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