◆年収300万円未満層の人口・雇用者比率~20代男性263万人・雇用者の過半数、非正規では約8割

次に、年収300万円未満層を推計する。図表4の20~24歳の男性正規雇用者の平均年収(292.6万円)の推計で、所定内給与額の平均値(20.8万円)に年間賞与その他特別給与額を合わせたことを参考に、ここでは「所定内給与額階級20.0~21.9万円以下」を年収300万円以下と仮定する。

ただし、この仮定では、男性正規雇用者の所定内給与額と年間賞与その他特別給与額から推計した年収を参考にしており、男性非正規雇用者や女性では、男性正規雇用者と所定内給与額階級が同等でも、年間賞与その他特別給与額は少ない可能性がある。

その場合、実際の年収は男性正規雇用者で想定したものより少なくなる。よって、男性非正規雇用者や女性における年収300万円未満の層は、この推計で得た結果より、やや多い可能性がある。

以上を踏まえて図表7を見ると、20~24歳の男性で年収300万円未満の雇用者は150万人で、同年代男性の正規雇用者と非正規雇用者を合わせた雇用者合計の74.9%を占めると推測される。雇用形態別に見ると、20~24歳男性の正規雇用者で年収300万円未満は83万人(同年代正規雇用男性の68.1%)、非正規雇用者では67万人(同85.5%)となる。

分かりやすさのため、図表7の正規雇用者と非正規雇用者を占める「所定内給与額階級20.0~21.9万円以下」の割合、つまり年収300万円未満と推定される層の割合を図表8に図示化した。

図表8を見ると、年収300万円未満層の割合は、正規雇用者より非正規雇用者の方が多い。また、男女とも20~24歳では正規雇用者でも7割程度を占めるが、年齢とともに低下し、45~49歳では男性は1割を下回り、女性でも3割程度まで低下する。

一方、非正規雇用者では、20~24歳では男女とも9割前後を占め、正規雇用者ほど年齢に伴って大きく低下するわけではないため、45~49歳でも男性は6割、女性は8割程度を占める。

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若年層の家族形成格差

◆男性の年収と既婚率の関係~年収300万円あたりの結婚の壁にぶつかる20~30代男性は約400万人

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前節では、雇用形態による年収差や年収300万円未満層の規模を推計したが、実は男性では、雇用形態や年収の違いは経済格差のみならず、家族形成状況の違いにも直結する。

図表9にて、20~30代の男性の年収と既婚率の関係を見ると、両者はおおむね比例関係にある。

1500万円以上の高年収層では、年齢が若いほど逆に既婚率が低下するが、これは仕事が忙し過ぎて、まだ結婚を考えられない、あるいは、その高年収という状況から結婚相手を吟味しているといった可能性もあるのだろう。

1500万円以上の高年収層を除くと、男性の年収と既婚率は、ほぼ比例関係にある。両者で描く曲線は、年収階級の低い位置では緩やかな傾きを示すが、300万円台あたりから傾きが急になる。また、図中にプロットしたように、年齢階級別の既婚率が、このあたりに重なる。

図表4で20~30歳代の非正規雇用男性の年収は300万円に満たなかったことから、これは非正規雇用者と正規雇用者の境目と考えられる。雇用が比較的安定している正規雇用者の割合が多くなると、既婚率が大きく上昇するのだろう。逆に言うと、不安定な雇用は未婚化の進行につながることになる。

なお、この年収300万円の壁にぶつかっている20~30歳代の男性は、図表7より合計398万人、同年代男性雇用者の34.8%を占める(*4)。

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(*4)図表7の5歳階級の値から20~30代を合計した値に計算したもの
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◆雇用形態別に見た婚姻・恋愛の状況~20~30代非正規男性の既婚率は約5%、交際相手なしが8割

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雇用形態の違いは、結婚の入り口である恋愛の状況にも影響を与える。

雇用形態別に20~30歳代の婚姻・恋愛の状況を見ると、男性では正規雇用者は既婚が27.5%、恋人ありが27.2%で、両者を合計すると54.7%となり、過半数にパートナーがいることになる(図表10)。

一方、非正規雇用者は既婚が4.7%、恋人ありが15.3%で、両者を合計しても20.0%である。裏を返すと、20~30代の非正規雇用男性の8割にはパートナーがいないということになる。さらに、その8割の男性のうち約半数には交際経験もない。

なお、国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」によれば、既婚者の約9割は恋愛結婚である(*5)。つまり、男性では雇用形態の違いは、結婚の前段階である恋愛の状況にも影響しており、それが既婚率の差としてあらわれている。

一方、女性では、正規雇用者より非正規雇用者の方が既婚率は高い。これは、これまでにも述べた通り、子育て期の女性は一旦離職して再就職するケースも多いためだろう。なお、既婚と恋人ありを合計したパートナーがいる割合は、女性では正規雇用者の方が多いが、男性ほどの違いはない。

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(*5)既婚者の出会いのきっかけのうち、「見合いで」や「結婚相談所で」を除き、「職場や仕事で」や「友人、兄弟姉妹を通じて」、「学校で」、「街中や旅先で」、「サークル・クラブ、習いごとで」、「アルバイトで」、「幼ななじみ・隣人」の選択割合を合計した値。
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