若年層の非正規化と年収格差

◆非正規雇用者の割合の推移~90年代以降、急増。

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総務省「労働力調査」によれば、雇用者に占める非正規雇用者の割合は1990年代から上昇している。特に若年層で大きく上昇しており、2015年では15~24歳の男性44.6%、女性52.1%、25~34歳の男性16.6%、女性40.9%を占める。

この中で25~34歳の男性の値は比較的低いが、15年前と比べて3倍に上昇している。現在では家族形成期にある男性の6~7人に1人が非正規雇用という不安定な立場で働いていることは、未婚化・少子化が進行する中で大きな課題である。

一方、35~44歳では、男性は若年層と比べると非正規雇用者の割合は低いが、やはり1990年代以降、上昇傾向にある。女性はM字カーブ問題で言われるように、出産・子育てで一旦離職し、子育てが落ち着いてからパート等で再就職するケースも多いため、非正規雇用者の割合は以前から高水準だが、男性同様、やや上昇傾向にある。

なお、同調査では2013年から、より細かな年齢区分でデータを公表している。状況を詳しく見るために、5歳階級別の雇用者に占める非正規雇用者の割合を示す(図表2)。

図表2では、図表1で10歳階級別に見た傾向と同様、男性では年齢が若いほど非正規雇用者の割合が高い。また、女性では20代までは年齢が若いほど非正規雇用者の割合が高いが、25~29歳を底に30代以降は年齢とともに非正規雇用者の割合が高くなる。なお、直近3年間では、いずれの年齢階級でも横ばいで推移している。

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◆世代別に見た非正規雇用者の割合~若い世代ほど同年齢でも非正規が多い、「世代効果」の負の影響

非正規雇用者の増加要因については、2000年頃から特に若年層に注目した報告が増えており、マクロ的要因として景気変動や労働需要の変化(*2)、個人的要因として生まれ育った社会階層や家庭環境(*3)などの影響が指摘されている。

マクロ的要因として、2008年の労働政策研究・研修機構の周氏による報告では、新卒時点の労働市場の状況が、その後のキャリアに継続的に影響を与える「世代効果」が指摘されている。

本稿でも「世代効果」に注目し、総務省「労働力調査」の最新値を用いて、生まれ年別に雇用者に占める非正規雇用者の割合を見ることで、世代(生まれ年)間の違いを確認する。つまり、年齢とともに非正規雇用者の割合は変化するが、世代によって、その変化に違いはあるのかを確認する。

図表3は、男性の1981~90年生まれでは、雇用者に占める非正規雇用者の割合は15~24歳時点では44.3%、25~34歳時点では16.6%というように見る。その結果、男性では生まれ年が最近であるほど、つまり、若い世代ほど、各年齢階級における非正規雇用者の割合が高いことが確認できる。

女性では30歳前後で出産・子育てを機に離職するケースも多いため、男性とグラフの形状は異なるが、やはり若い世代ほど各年齢における非正規雇用者の割合は高い傾向がある。

つまり、生まれ年別に非正規雇用者の割合の推移を見ると、生まれ年が最近であるほど、新卒時点から非正規雇用者の割合が高く、年齢を重ねても非正規雇用者の割合は高水準で推移している。

よって、若い世代ほど始めから非正規雇用者として働き、そのまま非正規雇用者として働き続ける者が多いことになる。景気低迷が長らく続き、新卒一括採用が主たる日本の労働市場では、若い世代ほど、負の「世代効果」が働いている様子がうかがえる。

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(*2)周燕飛(2008)「若年就業者の非正規化とその背景:1994-2003年」、日本経済研究、NO.59、2008.7. 等
(*3)西村幸満 (2006) 「若年の非正規就業と格差~都市規模開格差、学歴間格差、階層間格差の再検討」、季刊社会保障研究、42、pp. 137-148. 等
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