株主総会での決議方式

株主総会での決議方式は3種類あります(会社法309条)。まず、原則的な決議要件に当たる「普通決議」は、定足数として「議決権の過半数を有する株主の出席」、表決数として「出席株主の議決権の過半数の賛成」が必要としています。

次に「特別決議」は、株式併合や減資、定款変更、事業譲渡、合併、監査役の解任など、会社の根本を左右するような事項についての決議方式です。特別決議の定足数は「議決権の過半数を有する株主の出席」で、普通決議と変わりませんが、表決数として「出席株主の議決権の2/3以上の賛成」が要求されています。

最後に、要件がより厳格な「特殊決議」があります。

「議決権」は、10株なら10の議決権、100株なら100の議決権という具合に、「1株1議決権の原則」に基づいて付与されます。しかし「単元株制度」と呼ばれる「市場での株式売買や議決権を行使する際の最小単位」が設けられている会社もあります。この場合には、例えば1単元が100株の場合には、100株に対して1議決権が与えられます。

株主総会の流れ ネットで議案閲覧だけでなく中継を見たり行使したりも可能

基準日株主の手元には、株主総会の日時や場所、議案などを記載した「招集通知」が郵送されてきます。遠くに住んでいる人や何社もの株を持っている人など、自分で株主総会に出席できない株主は、代理人を出席させることによって議決権を行使することもできます。ただ、無制限に代理行使を認めてしまうと混乱を招くおそれもあるため、多くの株式会社は定款に「代理人は株主に限る」旨を定めています。

最近は、招集通知を事前にネットで開示する会社が増えており、このほか「書面投票」や、インターネットなどを利用した「電子投票」によって議決権を行使できる制度もあり、議決権を行使するための利便性は高まっています。

会社法のもとでは株主総会の会場をどこにするのかについての制約がほとんどなくなったので、ホテルのホールを借りるなど、本社とは別の地域で開催する例も多く見られます。

ところで会社法314条は取締役や監査役などに対し、株主総会で株主から説明を求められた場合の説明責任について定めています。最近は積極的に発言する個人株主も増えているようです。たとえ何時間かかったとしても、多くの株主から納得を得られるように努める会社の姿勢が一般的になってきたのだと言えるでしょう。

株主総会を楽しむ

株主総会は会社の重要事項を決める大切な会議ですが、同時に会社にとっても個々の株主とのコミュニケーションを図り、より円滑にする格好の機会でもあります。このため出席してくれた株主に対し、さまざまなサービスを提供している会社もあります。

株主にとって魅力的なサービスの代表格は、自社製品などの「お土産」でしよう。総会が終わった後に、会社の事業内容や組織について、よりフレンドリーなカタチで説明する場を設ける例も多く見られます。特に通常はあまり一般消費者にはなじみのない生産財や中間財のメーカーなどは、こうした機会を利用することに積極的です。

芸能事務所といった音楽関連の会社が、所属するアーティストのライブを開いたり、ゲームメーカーが株主に同伴して来た子供たちにゲームを遊べるようにしたりといったサービスも見られます。

株主総会のあり方も、会社の株主に対する考え方の現れとも言えます。経営者とのコミュニケーションなどを通じて株主総会を楽しむことも、会社をよく知るうえで大切なのかもしれません。(提供: お金のキャンパス

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