クラウドソーシング,ランサーズ,クラウドワークス,地方創生,移住
(写真=PIXTA)

企業や団体に所属しないフリーランスが働きやすい環境を作り、地方創生を目指す自治体が出てきた。鹿児島県奄美市や宮崎県日南市で、クラウドソーシング運営会社と連携し、テレワークのセミナーを開くなど本格的な活動に入っている。

クラウドソーシングの報酬が極端に安く、生業としているのがスキルの高いごくわずかに限られることから、フリーランスの移住者増加など大きな成果はまだ出ていない。だが、関係者は場所や時間にとらわれない新しい働き方で人口減少が続く地域の苦境を打開しようと張り切っている。

奄美市は50人以上のフリーランス移住が目標

奄美大島にある奄美市は、2015年からクラウドソーシング大手のランサーズと提携して「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を進めている。2020年までに200人のフリーランスを育成し、50人以上の移住者を誘致するのが目標だ。

奄美大島は豊かな自然と独特の伝統文化に恵まれているものの、働き口が少なく、若者の島外流出が続いている。人口は6月現在で約4万4000人。1985年の6万人余りをピークに減少の一途をたどっている。

観光と農林水産業が基幹産業で、他に大規模な産業がない。離島のハンディもあり、高い失業率に悩まされてきた。そこで、目をつけたのが本土との距離の遠さを克服しやすいIT関連産業だ。中でも企業などが発注するデザインや記事、文書作成を個人がインターネットとパソコンを通じて請け負うクラウドソーシングに注目した。

市は市役所内にフリーランス支援窓口を開設し、市民への情報発信に努める一方、これまでに市民ら86人を集めてフリーランスの働き方講座を開いてきた。主に記事や文書の作成とデザインについて講習している。同時に、市中心部にしか備わっていない高速インターネット回線網を2016年度から3年かけて市内全域に広げることにしている。

セミナー受講者のほとんどが女性だが、スキルアップへの意欲は高い。奄美市商水情報課は「新しい働き方なら、離島のハンディを克服できる。フリーランスが働きやすい島に変え、地域振興につなげたい」と意気込んでいる。