日南市はWebライター100人養成を目指す

日南市はテレワークで市民の収入拡大に取り組んでいる。クラウドソーシング大手のクラウドワークス <3900> 、宮崎市のIT企業アラタナと提携、2015年から子育てなどで通勤が難しい主婦らを対象にテレワークの講習会を開いている。

テレワーカーからの各種相談に応じる支援体制を構築するとともに、2020年までにWebライターを100人、クラウドソーシングで月額20万円以上稼ぐ人材を10人育成する計画を立て、総務省の地域情報化大賞2015で特別賞を受賞した。

宮崎県南部にあり、6月現在で人口約5万3000人。1980年の7万3000人をピークに人口減少が続いている。市内に雇用の場所が少ないことから、インターネットを通じて都会の仕事を受注できるクラウドソーシングに目をつけ、2014年には全国初の公設コワーキングスペース油津赤レンガ館を開設した。

首都圏からIT企業7社を誘致し、今後3年間で150人以上の地元雇用を見込んでいるが、テレワークの講習会で学んだ主婦の中には、進出してきたメディア運営企業に就職した人もいる。

日南市商工政策課は「Webライティングのスキルを高め、多くのフリーランスが集まる街にしたい。成功すれば移住者の増加など多くの面で可能性が高まる」と意欲いっぱいだ。

クラウドソーシングの低報酬打開が鍵

ただ奄美、日南両市とも高いスキルを持つプロのライターやデザイナーがどんどん集まってきているわけではない。クラウドソーシングを使い、都会の仕事を地方で受注し始めた段階だ。

クラウドソーシングは「インターネットのドヤ街」と批判されるほど低い報酬が問題になっている。クラウドワークスは80万人の受注者の中で、2015年10~12月で平均月額報酬が20万円を超えたのはわずか111人。このうち、ライターは3.6%しかいなかった。

総数1000文字の記事を書いて100円の報酬しか得られない仕事も珍しくなく、最低賃金以下の仕事がまん延しているのが実情だ。現状では本業を持つ人の副業や専業主婦の小遣い稼ぎになったとしても、これ1本で生活するのはかなり難しい。

ランサーズやクラウドワークスはスキルの高い受注者を「認定ランサー」、「プロクラウドワーカー」に認定し、生業として成り立つ高報酬の仕事をあっせんしようとしている。しかし、努力はまだ実を結んでいない。

Webのライティング業界はビジネスモデルが小さく、極限まで外注費用を下げて運営しているところが多い。子供の駄賃程度の報酬に抑えなければ利益を出せない企業や個人が、コスト削減のためにクラウドソーシングで仕事を発注していることも、常識外れの低賃金が横行する一因となっている。

奄美市、日南市ともフリーランス誘致やWebライター育成の鍵を握るのが、低報酬の打開とみているが、具体的な方策をまだ持ち合わせていない。新しい働き方を実現し、地方創生に結びつけるために、乗り越えなければならない大きな壁だ。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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