マスク氏が進める独自の「電力事業エコシステム」

マスク氏は自らが展開する事業について、「テスラは自動車メーカーであるだけでなく、エネルギー企業でもある」と述べている。自動車メーカーとして持続可能な輸送手段を普及させるとともに、エネルギー企業として世界中のエネルギー利用方法とそのインフラを根本的に変えることを目指している。

エネルギー事業を担うSolarCityは、「パワーウォール」、「パワーパック」、「ギガファクトリー」の3つの柱を掲げている。1つ目のパワーウォールは、太陽光発電を利用した家庭用蓄電池のことだ。2つ目のパワーパックは、工場、発電所、公共施設向けの蓄電池を指す。両者とも停電などの緊急時におけるバックアップ電源としても活用できる。

最後に、3つ目のギガファクトリーは、ネバダ州に建設中のリチウムイオンバッテリー工場だ。リチウムイオンバッテリーの調達先であるパナソニック <6752> と共同で立ち上げ2017年に稼働し2020年にはフル生産体制へ移行する予定だ。

マスク氏は、イノベーションを起こすために社内資源だけでなくサードパーティ(社外の第三者)を積極的に活用するオープンイノベーションを採り入れている。

というのも、エネルギー事業を推進するためには多種多様な先端技術と多額の資金が欠かせない。この2つを機動的かつ効果的に手に入れる上でサードパーティとの協調は極めて重要だ。SolarCityはほかにも、第三者所有モデルにより一般市民の自宅の屋根や庭に太陽光パネルを設置したりしている。

エネルギー産業には国家や自治体による厳しく複雑な規制が課せられるという特徴もある。SolarCityの2016年第1四半期(1-3月)決算では、売上高が前年比82%増の1億2258万ドル(約125億5031万円)に達し、アナリスト予想の1億844万ドルを上回った。一方で営業費用が前年比54%増の2億2692万ドルに膨らみ利益を圧迫した。その結果、1株損失は2.56ドルとなりアナリスト予想の2.31ドルを上回った。

同社のライブCEOも規制環境の厳しさが事業推進の妨げになったと述べている。株主らに宛てた書簡の中で、太陽光発電業界にとって数カ月、苦難の道が続いたと説明している。ソーラーパネルの設置を促進するためにはイノベーションでリードするとともに規制という社会環境に上手く適応することが不可欠だと言えそうだ。(ZUU online 編集部)