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(写真=PIXTA)

日銀の黒田総裁による、金融の「異次元緩和」が2013年3月にスタートしてから丸3年が経過しました。しかし、目標であった「2%の消費者物価上昇率」は依然として達成されていません。また、2016年2月には日本初のマイナス金利政策が導入されました。その結果、銀行の普通預金の金利引き下げや、投資信託などの金融商品が運用難で販売停止に追い込まれるなど、個人の資産運用に影響が出始めています。

一方、不動産投資の人気はさらに高まっているようです。マイナス金利政策によって、住宅ローンだけでなく不動産投資ローンの金利も下落しており、借入を利用して投資をするには絶好の機会となっています。

都心の一部マンションなどでは価格が高騰し過ぎたため、利回り低下が懸念されていますが、東京ビジネス地区と呼ばれる渋谷区や中央区などのオフィスビル市況は好調で、東京の不動産の底力を改めて実感する状態が続いています。

そこで今回は、この1年間の東京ビジネス地区における最新オフィスビルの空室率や家賃推移を分析しながら、2020年に五輪開催が予定されている東京の不動産の現状に迫ってみたいと思います。

1. 都心5区のオフィス平均空室率は2か月連続悪化、原因は新築ビル竣工が関係

オフィスビルのマーケット情報を定期的に発表している三鬼商事が、東京ビジネス地区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)内にある100坪以上の主要貸事務所ビル2,599棟(新築21棟、既存2,578棟)を対象に行った調査によると、2016年3月の同地区におけるオフィスの平均空室率は4.34%で、小幅ながら前月よりも0.30%上昇し、2カ月連続で悪化したことが分かりました。

その理由について、三鬼商事は「新宿区や港区に募集面積を残して竣工した新築ビルの影響」と分析しています。東京ビジネス地区全体の空室面積はこの1カ月で約7万9,200平方メートルも増加し、新築ビルの3月時点の空室率は29.04%と前月よりも6.23%と大きく上昇したことが分かりました。

実際、この分析結果を裏付けるようなデータも出ており、3月の地区別平均空室率は、新宿区が前月から1.03%上昇して4.86%となったほか、港区や千代田区でも上昇が確認できています。

新宿区、港区、千代田区で空室率が上昇し、既存、新築を含めた平均空室率も2カ月連続で悪化していることから、オフィスビル市況に悪化の兆しが見え始めているのではないかと心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、その心配は今のところ必要ないようです。前述した3月の空室率上昇の背景は、新築ビルの竣工が大きく関係していると考えられ、新築ビルで大型成約があった一方で、解約の動きは少なく、既存ビルの空室率も拡張移転などの成約で、小幅ながら前月よりも0.02%低下しています。

また、地区別平均空室率を見てみも、3月時点の中央区や渋谷区の空室率は低下しており、特に渋谷区では昨年6月から空室率は2%台とタイトな状況が続いています。2015年6月に実施された日本政策投資銀行による大企業を対象にした全国設備投資計画調査でも、好調な業績に支えられ、国内で成長分野への投資が広がるという見方が示されています。新築ビルへの移転や統合などに伴う大型成約が期待できることなどから、今後もオフィスビルの需要は高まると予測できます。