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(写真=PIXTA)

アパート経営では、家賃のほかに「共益費」や「管理費」を入居者に負担してもらうのが一般的です。いずれも共有部分の維持管理のための費用です。

具体的には、通路やエントランスの電気代、電球・蛍光管の交換費用、清掃費用などで、これらのコストをおおまかに積算し、部屋数などで割って算出します。大家さんが自由に設定できますが、何年かに1度の機器の更新費用なども見込んで、やや高めに設定します。徴収した共益費よりも実際のコストが下回った場合は、大家さんの収入となり、入居者に戻す必要はありません。

「家賃」と「共益費」は、別々に明示して入居者募集するのが一般的ですが、中には、共益費を取らずに家賃のみで募集する大家さんもいます。

「共益費なし」というお得感を演出する狙いかもしれませんが、実際には、家賃の中から共益費にあたるコストを支払うことになるので、「共益費を含んだ家賃」に過ぎません。そればかりか、共益費を家賃に一緒にしてしまうと、思わぬ落とし穴があるのです。それでは、どのような点に注意が必要なのでしょうか。

1. 入居者募集に当たっての落とし穴

アパート経営の重要なポイントは「いかに満室に導くか」という点です。わずか数千円の共益費を家賃に「組み込む」か、「外出し」にするかで、入居率(空室率)にも大きな影響が出る場合があります。

家賃が高く見えてしまう

例えば、共益費5,000円、家賃7万7,000円のアパートの場合、家賃に共益費を組み込んだ場合は8万2,000円となります。7万7,000円と8万2,000円とでは、入居者の印象がまるで違ってくるのです。

スーパーでも300円の商品よりも298円の方がよく売れます。実際にはわずか2円の差でしかないにも関わらず、200円台と300円台とでは大きな差に感じてしまうのが人間です。同様に、7万円台のアパートと8万円台のアパートでは反響は大きく違ってきます。

ネット検索されにくくなる

現代ではインターネットでアパートを探すのが一般的です。特にアパートの入居者には若者が多いため、ネットで検索する方法は重要な“入口”となっています。

多くの場合、居住エリアや最寄り駅からの距離、そして「家賃」を入力して物件を検索します。すると前述の例で家賃を「7万円~8万円」と設定されたら、共益費込み82,000円の物件は検索にヒットしなくなるのです。たとえ共益費込みの総家賃は同じでも、ネット検索に引っかからなくては勝負になりません。

礼金・敷金が高くなる

礼金・敷金の計算は、家賃をベースに設定しているケースが多いため、共益費込みの家賃にすると、高くなってしまう心配があります。特に若者の場合は、入居までの予算に限りがある場合が多く、数万円の差といっても、礼金・敷金が高い物件は敬遠される恐れがあるのです。

では逆に、共益費を高くして、家賃を安く見せるという方法はどうでしょうか。例えば前述の例なら、共益費を1万円にして家賃を7万2,000円にするというものです。確かにこうして家賃を低く設定すれば、一定の効果は期待できます。

しかし、1万円の共益費を徴収するからには、それにふさわしいクオリティを入居者に求められることも忘れてはなりません。共益費5,000円のアパートと同じ維持、管理しかできなければ、入居者の不満となり、トラブルや空室につながる危険性もあります。