弁護士,報酬,懲戒処分
(写真=PIXTA)

東京弁護士会が8月2日、依頼人から着手金を不当に受け取ったとし、大渕愛子弁護士に対し業務停止1カ月の懲戒処分を行ったことを公表した。そもそも弁護士はどのような報酬の取り方をしているのか。

報酬の計算は「着手金・報酬金方式」が主流

一般的な弁護士報酬の計算方式は、大きく分けると「着手金・報酬金方式」によるものと、「時間制報酬方式(タイムチャージ方式)」によるものがある。

「着手金・報酬金方式」とは、弁護士報酬を着手段階と終了段階の2段階で請求するものである。

まず事件の依頼を受けた着手段階で「着手金」を受け取る。「着手金」は、事件の結果に関係なく、弁護士が手続きを進めるために着手時に受け取るものだ。報酬とは別であり、後で報酬の一部に充当される手付金とは異なる。

その後、事件が成功に終わった場合、事件終了の段階で請求するのが「報酬金」である。成功というのは一部成功の場合も含まれ、その度合いに応じて請求するが、完全な不成功(裁判でいえば全面敗訴)の場合は請求しない。

弁護士が事件を引き受ける場合、「着手金・報酬金方式」で引き受けることが最も多い。「着手金」・「報酬金」の相場は、日本弁護士会連合会(日弁連)がアンケート結果を公表しているほか、2004年に廃止された過去の日弁連の弁護士報酬基準を参考にして決めることが多い。

このような2段階方式は、依頼人・弁護士双方のリスク回避につながる合理的な報酬制度と言えよう。依頼人にとっては、最初に弁護士報酬を全額支払ってしまったのでは、その後にその弁護士がきちんと仕事としてくれるかどうか不安がある。他方、かといって成功した際の報酬金しかないのでは、弁護士は仕事をしたのに報酬をもらえなくなるかもしれないという不安を抱えることになる。

タイムチャージ方式や顧問料方式もある

企業法務を行う弁護士などに比較的広く利用されている計算方式が、「時間制報酬方式(タイムチャージ方式)」である。依頼された事件の処理に必要とした時間に弁護士の1時間当たりの単価をかけて弁護士報酬を計算する方法である。

1時間あたりの相場としては、1~3万円程度から、著名弁護士の中には10万円以上を請求する者もいる。

この方式の問題点は、時間をかければかけるほど報酬が増えてしまう点である。1時間でさっと処理できる仕事を2時間も3時間もかけてゆっくりやれば報酬が増える。またその仕事を行うのに要する時間の妥当性の判断も難しい。しかも弁護士は多数の仕事を同時並行で行っているのであり、本当にその弁護士がその時間をその仕事に費やしたのかを依頼人が確認することも難しい。

このほか、顧問料と言って、企業や個人と顧問契約を締結し、その契約に基づき継続的に行う一定の法律事務に対して毎月請求するものもある。継続的に法律事務の依頼を受けるような場合に利用されている。

以上のほか、弁護士は依頼人に対し、実費として事件処理のため実際にかかる費用を請求する。裁判を起こす場合でいえば、裁判所に納める印紙代と予納郵券(切手)代、記録謄写費用、事件によっては保証金、鑑定料などがかかる。出張を要する事件については交通費、宿泊費、日当を請求する。