なぜ大渕弁護士は懲戒処分を受けたのか?
今回大渕弁護士が懲戒処分を受けた事案では、大渕弁護士が依頼人から着手金を受け取ったこと自体は、前述のの「着手金・報酬金方式」に従って報酬を受け取ったものであり、問題がないようにも思える。それにもかかわらず懲戒処分の対象となった理由は、依頼人が日本司法支援センター(法テラス)の代理援助制度を利用していたからだ。
代理援助制度とは、経済的に困窮している者が法的トラブルにあったときに、法テラスが弁護士費用等の立替えを行う制度である。弁護士が法テラスの代理援助制度を利用して受任する場合には、名目如何にかかわらず、法テラスから支払われる着手金・報酬金・実費以外に金員を受領してはならないことになっている。
これを認めたのでは、代理援助制度の趣旨が損なわれてしまうからだ。すなわち、経済的に資力の乏しい者でも法的サービスを受けられるように援助するという趣旨が損なわれてしまうということである。弁護士は、依頼人から直接報酬を受け取るのではなく、法テラスから報酬を受け取る。
東京弁護士会の決議によれば、大渕弁護士は依頼人の女性から養育費請求の依頼を受けた際、法テラスから受け取る金額とは別に、引き受けた際に約束した着手金の不足分や5ヶ月分の顧問料として、合計17万8500円を受領したという。しかも依頼人の女性が返金を求めたにもかかわらず応じず、弁護士会役員の説得でようやく返金したという。
このような行動を取った理由は、代理援助制度を利用した場合、弁護士は法テラスが認定した金額以外の金員を受領できないというルールを、東京弁護士会の副会長から説明を受けるまで、大渕弁護士は知らなかったからだという。このような法テラスのルールは、法テラスを利用する弁護士ならば当然知っておかなければならないことであり、「弁護士の品位を失う非行があった」とされ懲戒処分の対象となるのは真っ当な判断と言えよう。
大渕弁護士には、今回の件を真摯に反省して頂き、品位と誇りを持った弁護士として復活してもらいたい。(星川鳥之介、弁護士資格、CFP(R)資格を保有)
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