地方創生に向けた政府機関移転の一環として徳島県が提案していた消費者庁移転の可否判断が、3年後に先送りされることになった。政府は試験移転の結果を踏まえて8月末までに判断する方針だったが、官僚の抵抗を突破できず、結論を先送りしたとみられる。
政府機関の地方移転で中央省庁の移転決定は、京都府へ移る文化庁だけ。政府の研究、研修機関も全面移転は2件しかなく、掛け声倒れとの批判が上がっている。地方創生の前に立ちはだかる官僚の壁はあまりにも高かった。
新拠点を徳島に新設、移転を引き続き検討
「政府機関の地方移転は大変意義がある。(消費者庁移転については)河野太郎前消費者行政担当相の考えをしっかりと受け継いでいく」。内閣改造で新たに就任した松本純消費者担当相は、記者会見でこう打ち出した。
河野前消費者担当相は7月末、消費者庁の全面移転を当面見送り、代わりに消費者庁の新拠点「消費者行政新未来創造オフィス」を徳島県内に新設、引き続き移転について検討していく方針を示した。
松本消費者担当相は会見で8月中に新拠点の基本方針が政府から示されることを明らかにしたうえで、「この3年間で一気に(事態が)進まないかもしれないが、1つひとつ丁寧に(検討作業を)進めていく」と述べた。
また、河野前消費者担当相は退任の会見に臨み「大臣が交代しても方針はぶれない。今後の3年間で外部環境が変わる中、しっかりと作業を進めてほしい」と政府の方針が変わらないことを強調した。
相次ぐ移転見送りに自治体から反発の声
政府機関の地方移転は、地方創生策の柱の1つとして政府が鳴り物入りで打ち出した。政府機関の一部を地方へ移し、東京一極集中に歯止めをかけるのが目的だ。民間企業の本社機能地方移転や地方移住の推進を呼びかけるのに当たり、政府自らが率先して地方へ移る覚悟を示す狙いも込められていた。
政府が中央省庁や研究、研修機関の移転先を募ったところ、首都圏の1都3県と鹿児島県を除く42道府県から中央省庁7機関を含む合計69機関に対する提案が寄せられた。しかし、研究、研修機関で移転が決まったのは、計23機関にとどまった。
このうち、ほとんどが一部移転や自治体との連携強化。全面移転となると、広島県に移転済みの酒類総合研究所と大阪府が提案した国立健康・栄養研究所だけだった。
中央省庁では、文化庁の京都府移転が決まったが、北海道と兵庫県が提案した観光庁、大阪府と長野県が手を挙げた特許庁、大阪府が誘致を進めた中小企業庁、三重県が希望する気象庁は移転が見送られている。
徳島県が誘致する消費者庁と和歌山県が提案した総務省統計局は、試験移転や人材確保の見通し検討のため、8月末まで結論を先送りするとしていた。
相次ぐ移転見送りに自治体の間から反発の声が続出した。群馬県の笠原寛企画部長(当時)は県議会で「各省庁の本気度はいかがなものか」と疑問の声を上げた。長野県の阿部守一知事は「踏み込んだ対応とならなかったのは大変残念」とのコメントを発表している。