右を見ても左を見ても、先進国はどこも低金利。投資先に悩みながら世界情勢を眺める投資家は少なく無いだろう。低金利かつ不安定な相場の中で、40%のリターンを出すファンドがあると聞けば、個人投資家も使える手法か気になるところ。高リターンを出す「ターム・プレミアム」戦略を紹介しよう。

ヘッジファンドのパフォーマンスは年々下がっている

専門調査会社ユーリカヘッジによると、2016年のヘッジファンドのパフォーマンスは6月までで1.02%。2013年の9.23%から、2014年の4.82%、2015年の1.63%と年々低下傾向にあることが分かる世界的にリスクオフで債券が買われる一方で、株式のパフォーマンスがさえないことが主因だ。 ヘッジファンドは運用フィーが2%程度と高いこともあり、運用成績の悪いヘッジファンドは解約が増えているようだ。

運用難の中、今年上半期(1-6月)のヘッジファンド運用成績ランキングで、シンガポールのクオンテッジ・キャピタルグループのヘッジファンドが注目を集めている。クオンテッジ・グローバル・ファンドという一般的にはまだまだ無名のファンドが40%のリターンを上げているのだという。6月単月で12%のリターンを上げているのだ。

リターン40%のファンドの正体とは?

クオンテッジ・グローバル・ファンドは、基本的にマクロ系のクオンツモデルのヘッジファンドだ。クオンツモデルとは、金融工学や数理学をつかってコンピュータによるシステムトレードをするファンドだ。様々なコモディティ、先物などのデリバティブを駆使しているようで、CTA(商品投資顧問)とも言えるだろう。同社は2006年にシンガポールで設立、ポートフォリオ・マネジメントを大学で教えていた教授や、元保険数理士が運用している。投資対象であるユニバース(組み入れ候補の銘柄の集合)は、債券・株・商品のデリバティブなど広範囲に及び、160の商品に投資できるようになっている。1銘柄は5%以下にすることで、分散投資を計っているようだ。

ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によれば、類似した戦略を対象とするHFRIマクロ・システマティック・ダイバーシファイド指数は6月に4.4%上昇、年初来で4.5%上げている。ヘッジファンドの戦略の中では、パフォーマンスが悪くないものだが、クオンテッジのリターンはずば抜けている。

同社はポジションの詳細は公表していないが、様々なポジションを持つ中で、今年の好成績をたたき出したのは、ターム・プレミアム戦略のようだ、と顧客向けの運用報告書の中で答えている。高リスクの長期債を買い持ちにしつつ、短期債を売り持ちにする戦略が奏功しているようだ。