「ターム・プレミアム」戦略とは?

この戦略は基本的には、短期債と長期債利回りの金利差(スプレッド)の拡大、縮小に賭ける取引だ。

具体的に円債で説明しよう。マイナス金利導入前である2015年末、短期債(3ヶ月)の利回りは-0.04%程度、長期債(10年)の利回りは0.27%程度だった。そのスプレッドは0.31%だ。

0.27- (-0.04) =0.31

現在短期債は-0.28%程度、長期債は-0.18%程度まで低下しており、そのスプレッドは0.10%まで縮小している。

-0.18 -(-0.28) =0.10

「ターム・プレミアム」とは、長期債を保有するときに上乗せされる金利のことを指す。そこで、短期債と長期債を残存期間と最終利回りで表した、イールドカーブがどうなるかに投資するのが「ターム・プレミアム」戦略である。表し方としては、フラット化(寝る)、スティープ化(立つ)というのだが、「 寝る」「立つ」というのはグラフの曲線が寝ているか、立っているかを意味している。

今回で言えば、金利差が0.31%から0.10%と小さくなったので、イールドカーブがフラット化したということになる。フラットに賭けたポジションをもっていれば、利益となる。クオンテッジはこういったトレードを様々な国の債券でやっていたと考えられる。

仕組みは簡単だが、クオンテッジのパフォーマンスからすると、かなりのレバレッジを賭けていることが想像できる。では、個人でもターム・プレミアム戦略を実践することは出来るのだろうか?

個人に応用するなら、長期債投資が理にかなう?

イールドカープの動きに賭けることは個人でも出来る。ただ詳細で説明したとおり、現在だと、スプレッドが縮小してせいぜい0.2%程度。デリバティブを駆使して、レバレッジを賭けないと40%もの利回りを達成することは難しいだろう。金利のデリバティブに投資するには資金量も必要であり、期日もあるので個人向けとはいいづらい。 リターンが高くなる可能性がある分、リスクも大きい。

実際、クオンテッジでさえ、ファンドのボラティリティは開示されているだけでも、かなり高い。2015年の同社のパフォーマンスはマイナス18%、特にアジア通貨危機の様相を示した2015年8月には月間で16%の下落となっている。それが今年は40%のリターンと考えれば、かなりのボラティリティだ。 もちろん、2016年上半期は世界市場の動きが激しかったので、その情勢に同ファンドの戦略が、うまくはまったということがあるだろう。

個人が参考にできるとしたら、Brexitのような不透明感が広がる場面だろう。リスクオフで株が売られ、債券が買われる局面が続くなら、超長期国債や低格付の国や企業の長期債券を買うことが、ターム・プレミアム戦略に近い考え方になる。通常、長い目で見る単価値上がりまでの期間が、買い注文が集まることで短くなるため、債券価格が安い状態で年限の長い債券に投資することが、ターム・プレミアム戦略の考え方に沿うからだ。

ただ、格付けの低い国や企業はデフォルト・リスクも高く、流動性も低い。すでに長期債の利回りも低下傾向だ。また、超長期国債などは直接個人が購入できないため、投信などで持つことになる。ただ、個人が安易に勝負するような戦略ではないことは、肝に銘じておきたい。 基本的には、債権利回りがマイナスまで低下している状況だと、株を長期で買うことの方が投資原則にはかなっている。(ZUU online編集部)

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