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(画像=Webサイトより)

「伊藤忠商事の決算書において一部不適切会計がある」--。

米国のグラウカス・リサーチグループが7月27日レポートを公開し、「伊藤忠商事は会計上一部不適切な部分があり、昨年に日本にて不正会計問題が発覚した東芝のように、財務報告訂正を行う必要がでてくる可能性がある」との見解を述べた。

これにより同日株価は1136円となり、年初来最安値を更新した。

伊藤忠は同社Webサイト上で、「弊社は適切に会計処理を行っており、会計監査法人の承認も得ている。そのためグラウカスとは見解が異なる」というリリースを出しており、抗戦の構えだ。

今回はこの指摘された「不適切会計」の内容とグラウカスの正体に迫ってみる。

問題となった「不適切会計」とは?

今回の分析において約40ページに渡るグラウカスの分析レポートが公開されているので、内容を見ていきたい。

問題とされているのは投資に関係する会計だ。一つ目がコロンビアにおける炭鉱事業の持分だ。こちらは出資先のジョイントベンチャー契約と呼ばれる、合弁会社(複数の企業が資本を出し合い設立した会社)設立における区分を不適切に変更したということで指摘されている。

一方で伊藤忠はIRにて「14年度に行われた契約見直しにより承認権が消失したため区分変更を行った」という主張を行っている。

2点目が中国の政府系である中国中心集団CITICにおける業務資本提携においてコチラを連結会計に取り込むことにより、収益を20%過大評価したという指摘である。

また3点目が中国の食品および流通企業「頂新」の持分区分を変更することにより特別利益発生を行ったタイミングが疑問だ、という指摘だ。この部分に関しても伊藤忠は「14年度に持分を一部売却し、株主間の協定書も改定を行ったため適切な区分変更だ」という意見を述べている。

これらを見ると分かるように、いずれの部分も投資に関する区分変更と、それに伴う収益の増減であり、伊藤忠商事の本業ビジネスに与える影響は限定的だ。また伊藤忠商事も「会計に関しては「監査法人トーマツより(今回指摘された部分も含めてすべて)適正だという評価を出されている」と主張している。

またBloombergが発行したニュースリリースによると、グラウカス以外の証券アナリストも「(市場の反応は)一時的なものであると考えられる。指摘された部分は解釈の問題であり、不正な会計処理であるとまではいえないと感じる」という旨のコメントを残している。