「コメダ愛」。リオ五輪でメダルをとった女子選手の名前ではない。名古屋栄町のキャバクラ嬢の名前でもない。名古屋発のコーヒーチェーン「コメダ珈琲店」を愛してやまない人たちの想いを指して、そう呼んでいる。
コメダ珈琲店は不思議なお店だ。
コーヒーチェーンでありながら、はっきり言って「コーヒーはおいしくない」と多くのファンが認めている。しかし、毎日のように通ってしまう「コメダ中毒」者などのリピーターに支持されている。
Twitter では「#コメダ珈琲」「#コメダ愛」といったハッシュタグで、ファンは「コメダ愛」を共有している。今回は「コメダが愛される秘密」に迫ってみよう。
コメダはコーヒーでなくスペースを売る
コメダ珈琲店は、名古屋ではスターバックスよりも人気があるそうだ。コメダはコーヒーでなくスペースを売っており、それが「コメダ中毒」「コメダ愛」を生み出す要因とみられる。
Wi-Fi があり、新聞雑誌があり、ゆったりとしたソファがあり、座席に高めのパーティションがある。地元に愛される親しみやすさ、ゆったりとくつろげるスペースが売りなのだ。コメダ珈琲店は回転率を度外視しているようで、何時間でも気持ちよく過ごさせてくれる。
珈琲店でありながら、フードメニューの人気も高い。
名古屋風のみそカツサンド、ハンバーガー、フィッシュフライバーガーはありえないぐらいデカい。小倉あんのトースト、シロノワールなどのスイーツ系メニューも充実している。
名古屋式ともいうのか、開店から11時までは全てのドリンクに「焼き立てのトースト」と「温かいゆで玉子」などが付く無料の「モーニングサービス」を実施しているのもうれしい。
こうした過ごしやすさ、フードメニューがファンの「コメダ愛」を育み、「コメダ中毒」者の心を奪う理由なのだろう。
コメダは新規上場で公募価格割れ
コメダ珈琲店をフランチャイズ展開するコメダホールディングス <3543> が東証1部に上場したのは今年6月29日。上場時の株式売出の公募価格が1960円だったのに対し、上場当日は売り気配で始まり、公募価格を93円(4.7%)下回る1867円で初値がついた。
ただ公募価格を下回ったからといって、コメダの人気や実力がないと見るのは早計だ。
読者のなかには、新規上場はかなりの確率で値上がりするとの話を聞いたことがあるかもしれない。しかし、この「神話」はあくまでも新興市場銘柄が中心の話だ。今年前半の日本市場でのIPOは39社。そのうち新興市場への上場は32社で平均初値は82%上昇している。
一方、東証1部、2部への直接上場はコメダを含めて7社。平均初値は2%の下落だった。 全部のIPOが上がるわけではないのだ。
直接東証1部や2部に上場するには、株主数2200人以上、流通株式が2万単位以上、上場時の時価総額が250億円を超えることなど厳しい基準がある。東証1部に上場承認されるということはすでにある程度確固とした業界での地位を確立している会社であり、同業他社比較も容易であるため公募価格と初値がそれほど乖離しないことが多い。新興市場の会社と違い流通株式も多いため、上場日は売り圧力も出やすいのだ。
初値後のコメダは7月1日高値2001円まで買われた後、7月20日安値1785円まで下げ、その後は1850円をはさんだ展開となっている。