非日常の劇場型演出とモデルたち

現在のヴィクトリアズ・シークレットといえば、毎年恒例になった、世界190カ国以上で放映され、高視聴率を叩き出す「ヴィクトリアズ・シークレット・ファッションショー」だろう。主役は、おなじみのエンジェル・モデルたちと、頭角をあらわし始めた若きPINKモデルたちだ。ちなみに、あのミランダ・カーも、PINKモデル出身である。このショーと2つのブランドモデルは三極は互いに深い関係があり、ブランドイメージを向上させる起爆剤となっている。

ランジェリー姿のエンジェルたちが、天使の羽をまとい、セレーナ・ゴメスやテイラー・スウィフトなど、旬のミュージシャンの生歌に合わせて、ランウェイを歩く。さまざまな表情でを見せる様は、非日常の極致ともいうべきもので、高い評価を受けている。この非日常性こそ、ヴィクトリアズ・シークレットのランジェリーを身につける、女性たちが夢見る世界であり、マーケティングの核心とも呼ぶべきものだ。

10億超えの「ファンタジー・ブラ」はモデルたちの栄誉

モデルたちは、「理想の体型」をしており、女性たちは同ブランドのランジェリーや服を着ることで、美しいエンジェルやPINKモデルを、自身の身体に投影できる。加えて、モデルたちの体型も、決して細すぎるわけではない。食生活に気を使っているのはもちろんのことだが、特筆すべきは彼女たちのトレーニングだ。ショーの前だけでなく日常的に、アスリート顔負けのトレーニングをして、筋肉質でしなやかな体型を維持しているのだ。

モデルがまとう下着は、高級感があふれているが、身近なショッピングモールで購入可能なので、女性たちの購買意欲をそそる。ショーの開催時期も、ホリデー・ショッピングのピークである、11月下旬から12月上旬と、戦略的に設定されている。

また、時に機能性から離れるのも、同ブランドの戦略だ。特に、宝石を散りばめた「ファンタジー・ブラ」は、まさに豪華な「アート」だ。これを身につけられるモデルは、選ばれた時に涙することもある栄誉なのだ。観客の中でも、毎年「今年はどんなものが飛び出すのか」と話題になる。2000年のショーでは、1500万ドル(2000年当時1ドル107円なので、約16億円)という、気の遠くなるような金額のブラが登場した。イベントには毎年15億円近い経費がかかるが、売り上げや放映権料が伸びて「5倍(の75億円)になって返ってくる」と、同社CEOのシャレン・ターニー氏は言う。

スポンサーも、宝飾ブランドのスワロフスキー、化粧品や健康食品の富士フイルム <4901> など豪華そのもの。話題性があるため、広告料は十分ペイするのだという。

このほかにも、世界各国の店舗にエンジェルを登場させるなど、若い女性向けアパレル競合のアメリカン・イーグルなどがマネのできない芸当で、独り勝ちをしてきた。

ヴィクトリアズ・シークレットの「シークレット」、それはライバル企業とはスケールが違う「非日常性の創造」にありそうだ。(ZUU online編集部)

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