「FinTechの発展で新興国に950万件の新雇用口が創出される」との予測を述べたレポートを、米企業コンサルティング会社、マッキンゼーが発表した。
現在新興国の成人の8割以上が所有するスマートフォンを活用した金融サービスが、今後10年で新興国の国内総生産(GDP)を最高6%引きあげ、総額37兆ドル(約3736兆2600億円)に達すると見こんでいる。
個人消費者から企業、政府まで恩恵をもたらすFinTech
マッキンゼーの調査によると十分な金融機関へのアクセスがない新興国の中小企業は、現時点で2億社にのぼる。こうした現状が、新興経済の成長を押しとどめていることはいうまでもない。
マッキンゼーはバンキングや決済といったモバイルサービスが「新興国の未来を変える」と予測しており、個人消費者の生活だけではなく企業や政府の日常的な業務を劇的に向上させると考えている。
具体的にはFinTechの発展により、金融機関へのアクセスが160億人にいきわたる。クレジットリスクへのアクセスが可能になった融資企業からは、2兆1000億ドル(約212兆580億円)が個人や企業に貸し出される。税金や公共支出システムの向上は、政府に年間1100億ドル(約11兆1078億円)をもたらすというのが、マッキンゼーの見解だ。
さらには金融機関が旧式の銀行口座システムをデジタル化すれば、年間4000億ドル(約
40兆3920億円)のコスト削減が期待できるうえ、顧客の満足度を商品やサービスの販売につなげ、バランスシートを4兆2000億ドル(約423兆9900億円)まで拡大することが可能だという。
新興国におけるスマホの可能性に賭けているのはGoogleやApple、サムスンなどの国際大手も同じだ。
Googleはインドで金融情報サイト「Bharat Saves」の立ちあげを計画しているほか、Appleやサムスンはすでに中国決済市場に乗りだしている。将来的にこれらの国を含む新興地域全体が巨大なFinTech市場と化しても、けっして不思議ではない流れである。
マッキンゼーはレポートの最後を「絶好の機会を活かすためには、企業や政府の先導者が率先して環境を整えていくことが不可欠となる」と結んでいる。受け身の姿勢で誰かが開拓してくれるのを待っているだけでは、チャンスをみすみす逃すようなものだ。
果たして新興国はFinTechがもたらす最大のチャンスを、自らの手でつかみれるのだろうか。( FinTech online編集部 )
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