イングランドおよびウェールズ地域の刑務所における安全状況改善策とし、2500人の大型増員が実施されることがエリザベス・トラス法務長官から発表された。1億400万ポンド(約133億6795万円)を投じ、近年深刻化している刑務所内での暴力・麻薬事件の増加や過密収容問題に本格的に取り組む意向だ。

企業のリストラが相次ぐ中、大量雇用は国民にとって歓迎すべき動きだが、特殊な職務ゆえに雇用難航を懸念する声もあがっている。

職員への暴力行為は1日65件 過去1年で4割増

イングランドおよびウェールズ地域の刑務所内環境については、これまで度々とりあげられてきた。2013年に法務省矯正局が実施した調査では、環境の悪化にともない囚人の自殺率が過去10年間で最高値に達し、毎月平均6人の自殺者がでていることなどが報告された。

今年10月4日に開催された保守党カンファレンスで、トラス法務長官は政府から支給された追加支援金を大型増員に投じることを発表。刑務所内ではこびる暴力行為や麻薬取引・使用の撲滅に全力を注ぐ決意を明らかにした。

環境悪化の根本的な原因として、刑務所内の職員不足が考えられる。2010年の大量リストラを機に、刑務官数は2万5000人から1万8000人に減少。今回の増員では15%にあたる2500人の雇用を予定している。

しかし刑務所勤務は万人向けする職種ではないため、ロンドンを含む20%の地域では人員確保が難航すると予想されている。刑務所環境の悪化はけっして囚人内にかぎったことではない。過去1年間で刑務官への被害件数が40%増え、1日平均65件もの暴力行為が繰り返されているという。

これに対してはアプレンティス シップ・プログラム(従弟制度)などを通じて各地域の雇用市場に強力に働きかけることで、目標の雇用件数を達成する構えだ。また「常習的犯行率」の基準をさげ、過密収容の軽減を図ることも検討されている。

トラス法務長官は「法務省の任務は囚人収容だけにとどまらず、組織の再編も含む」と、今後英国全域の刑務所環境の実態調査に乗りだし、改善策を打ちだしていく方針だ。特に薬物に関しては、すべての囚人には入獄・出獄の際、薬物検査を義務づける法案のほか、囚人に与える目的で飛行機から薬物を落下させる闇取引対策として、刑務所上空の航空機飛行を禁ずる法案なども提出されている。

受刑者の公正と社会復帰を手助けするという重大な使命に加え、横行する暴力や薬物とも戦い続ける刑務官という職業は、生半可な心構えではとうてい務まらないはずだ。政府の働きかけがどれほど人員確保に貢献するかの一点に、注目が集まっている。(ZUU online 編集部)

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