トランプ当選後の乱高下が予想される理由
気鋭の経済学者であるジャスティン・ウォルファーズ氏などがシミュレーションをしたところによると、「トランプ大統領誕生」でニューヨーク株式市場は前日比10~15%も下げるとの予想だったため、投資家たちは息を呑んでいる。さまざまな市場関係者の予測によれば、「ヒラリー大統領誕生」で、米株式は2~4%上昇すると見込まれていた。
だが、トランプ氏とクリントン氏のどちらが次期大統領になっても、市場は乱高下で大きな利益が見込める投資のチャンスと見ていた。米投資分析会社のACGアナリティックスのラリー・マクドナルド氏は、「ヒラリー氏当選で株が上がれば、上がり切ったところで利益確定だし、トランプ氏が新大統領になれば、株価が底値を付けたところで買いを入れ、儲けられる」とのシナリオを描いている。
また、米投資顧問会社ミラー・タバックのストラテジスト、マット・メイリー氏は、「どちらの候補が勝っても、市場は下げる。トランプ氏当選の場合は、その下げ幅がより大きいだけの話だ」と語った。まさに、「噂で買って事実で売る」の実践だ。
著名経済ジャーナリストのキャロライン・バウム氏も、「市場は、本音レベルでは大統領選による不透明さを嫌っていない」と指摘する。
だが、ウォール街がトランプ次期大統領のホワイトハウス入りを歓迎していないのは、明らかだ。クリントン氏当選の確率が上がると、株式も連動してあげてきたからだ。市場は、トランプ氏を予測不能だと見ている。投資家にとっての理想は、クリントン大統領の下、上下院のどちらかを共和党が取る絶妙なバランスであったが、蓋を開けてみれば、大統領も上下院も共和党が押さえてしまったのである。ただ、市場や企業は伝統的に共和党と相性が良く、動揺は長続きしない可能性がある。
買いが入る「トランプ銘柄」は?
そうしたなか、早くも「トランプ銘柄」の値上がりが取りざたされている。トランプ次期大統領は、多額の支出がボロボロの状態である米インフラの修繕や強化を公約していた。橋や道路を大規模に直すとなれば、買われるのは鉄鋼や重機、交通関連株だ。
また、クリーン・エネルギーを嫌うトランプ氏が大統領になることで、太陽発電が売られ、石炭関連株は買われるかもしれない。ちなみに、トランプ陣営の政策顧問であるピーター・ナバロ氏は、トランプ氏が勝利した暁には、ダウ平均株価が2万5000ドルを上回るだろうと、強気の予想をしている。
こうしたなか、トランプ政権下で長期的にはドル高円安、金価格の上昇、そして米国債も強含むとの見通しが多い。
選挙後は長期的な投資見通しを
大統領選後の短期的な乱高下は投資のチャンスだが、長期的な視点を見失ってはならないと専門家は警告する。
独保険大手アリアンツの主席経済顧問であるモハメド・エラリアン氏は、「大統領選の市場への影響が大したことがなくても、最近の人工的な安定は、より長期的な経済的・財政的・構造的・政治的な出来事の数々に脅かされていることを忘れてはならない」とする。中国経済の問題や、原油安などを投資家は頭に入れておくべきだとの意見である。
米フィデリティ・インベストメンツのジョン・スゥイニーEVP(Executive Vice President)は、「長期的な視野を持て。短期的な乱高下を気にするな。それは、必ず起こる。だが、長期的な動きから目をそらすな」とアドバイスしている。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)
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