米国大統領選候補は、共和党がトランプ氏、民主党がヒラリー・クリントン氏に集約され、11月の本戦に向けて今後両候補のバトルがヒートアップしている。金融市場は、過激な主張で不透明感満載のトランプ氏への警戒感が強かったが、ここにきて、ヒラリー氏の政策が左傾化することへの不安感が出てきている。

まずトランプ氏の過激発言から日本に関する部分をおさらいしよう。トランプ氏は、アメリカにとって都合の悪いこと、マイナスの影響がありそうなことを、過激な発言で批判して支持を集めている。

ドル安政策で円高→株安シナリオ

「日本のアベは“殺人者”だが、彼はすごい。地獄の円安で米国と日本が競争できないようにした。掘削業の友人がキャタピラーでなくコマツのトラクターを買った。なぜ?と聞いたら、そりゃ円が安いからさ、と。これじゃまともな競争が不可能だ」 (2015年7月、アリゾナ州での演説)

トランプ氏はドル安が米国の国益にかなうと信奉し、日本の円安誘導を正面から避難している。さらに、現時点での利上げは米経済への打撃になる恐れがあるとし、FRBによる金利を低水準に維持する方針を支持。日米関係を考えると 日本が金融政策や為替介入で円安誘導に踏み込むのは難しく、利上げの可能性も低下、となると、円安トレンドには戻らないであろう。

大統領選のみを持って極端な円高に振れることはなくても、円高トレンドの中で何かしらのリスク要因が認識されれば、株安となるシナリオも考えられる。

貿易政策における「内向き」政策が実現化すれば製造業に打撃

「日本から何百万台も自動車が流れ込んでいるが、ほとんど関税がかかっていない(2.5%)。もし日本がネブラスカ州の牛肉に38%の関税をかけるのであれば、われわれも日本車に同率の関税を請求するつもりだ」(2016年5月、ネブラスカ州の演説)。

現在、日本が輸入するアメリカ産牛肉はTPP発効時には27.5%に、その後段階的に9%まで下がる予定だ。

トランプ氏は、「TPPは破滅的合意」と自由貿易には反対。新興国製の安い製品が輸入されているためにアメリカの雇用が失われた、との主張が労働者層に受けている。保護主義的政策でアメリカ国内の産業が活発になるかは疑問だが、輸入関税の引き上げが仮に実現すれば、日本の製造業にネガティブ。特に、中国・メキシコなどに製造拠点を設け北米に輸出している輸送機器、自動車、部品等の製造業が影響を受けるであろう。

外交・防衛:国際関係不安定化、財政負担増はリスクオフ要因に

「米国には巨額の資金を日本の防衛に費やす余裕はない。在日米軍の駐留経費の大幅な増額を拒んだときには米軍を撤退させるのか?喜んでというわけではないが、答えはイエスだ」「米国は世界の警察官はできない。米国が国力衰退の道を進めば、日韓の核兵器の保有はあり得る」(2016年3月のNY Timesのインタビュー) 。

日本は米軍の駐留費用の約半分を負担している。その額は年間20億ドル(約2200億円)であり、全額負担しても追加2200億円。可能性は低いが、在日米軍が撤退し単独で自国を防衛しようとすれば、防衛費が現在のGDP比1%から世界の平均的レベル2%程度に膨張すると、追加額は5兆円。そしてアジア地域全体の安全保証が大混乱に陥り、財政も経済も崩壊シナリオが意識されよう。

一方、中道路線で、特に政策に新鮮味がない一方、政治経験も豊富で安心感があるとされてきたヒラリー氏。ところが、民主党予備選での予想外の苦戦から、政策の修正を迫られる可能性も出てきた。

ヒラリー氏の政策が左傾化?で、どちらにせよ日本株にはマイナス

経済外交などの政策に安心感があるヒラリーではあるが、新鮮味がなく、大企業との近い関係や私用メール問題などで足元をすくわれる状況となっている。

民主党予備選におけるサンダース氏の躍進で明らかになったのは、格差への不満。若者を中心とするサンダース氏の支持者は熱狂的で、富裕層への増税、公立大学の無償化、金融機関の解体などの政策が支持を得ている。サンダース氏支持者はヒラリー氏に拒否感を示す人も多く、この支持層を取り込むために、ヒラリー氏はサンダース氏の政策を一部取り入れざるを得ないと言われている。

クリントン氏は米紙への寄稿で「日本は輸出を増やすために円安に誘導している」とし、大統領になれば対抗措置を取る方針だとしている。またオバマ政権時に国務長官としてTPPを推進した彼女ではあるが、今回の選挙では「賃金を上昇させ、国内の安全確保につながるならば支持するが、こうした基準を満たしていないので反対だ」と方針転換。

ヒラリー、トランプ、どちらにしても、反円安、反TPPで日本株にはマイナス材料と言わざるを得ない。日本は金融政策や財政出動に頼らず、地道に“第三の矢”である構造改革を進める以外に、日本株が見直される道はないのではないか。(ZUU online 編集部)

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