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(写真=Thinkstock/Getty Images)

ステルス戦闘機・殲10の女性パイロット余旭・空軍上尉が11月12日、訓練編隊飛行中の事故により殉職した。前席の男性パイロットはパラシュートで脱出した。しかし後席の余上尉は脱出装置で射出された際、遼機の補助翼にぶつかった。その影響で彼女のパラシュートは開かなかったという。

デモンストレーション飛行と女性飛行士

以前、広東省・珠海で行われたデモ飛行の際にも、編隊飛行の危険性は問題となっていた。「八一表演飛行隊」の曹隊長は「我々には全部で40以上の動作がある。デモ飛行の都度たくさんのパターンを演じる。さらにそのパターンも不断に改良と創新を重ねている。我々の原則は見栄えがしてかつ危険を遠ざけるというものだ。しかし何かを犠牲にしないと、これは実現できない。」

また曹隊長は表演隊の女性飛行士について、「かつて女性飛行士の主要任務は、輸送機の操縦だった。しかし女性の能力向上を考慮して、戦闘機の操縦にも参与させるようになった。そんな彼女らの当面の配置は表演隊なのである」としている。

さらに女性飛行士の身体能力については「表演隊の女性飛行士は、航空大学から抜てきした者たちで、さらにステルス戦闘機“殲”型の経験者である。訓練の難度と強度は男性隊員と全く変わらない」と述べている。

つまり本物のトップガンなのである。

「金孔雀」と呼ばれた上尉の華々しい経歴

余旭上尉は1986年、四川省・崇州生まれ。空軍上尉であり二級飛行員、八一飛行表演隊中隊長。2005年、人民解放軍空軍航空大学校に入学、第8期女飛行学員となる。そして中国初の“殲”型戦闘機の女性パイロットに抜てきされた。2009年、10月1日、建国60年の国慶節デモンストレーション飛行に参加。2010年、中央電視台の「我心飛翔」に16名の女性パイロットともに出演、英姿を見せる。2012年、ステルス戦闘機“殲10”型初の女性パイロットとなる。孔雀舞が得意、美人で聡明なことから、「金孔雀」の愛称で親しまれた。独身だった。空軍の女性トップランナーであった。

中国のネット辞書・百度知道で、戦闘機事故と入力すると、予想通り米軍の戦闘機事故ばかり出てきた。その中に微博(ミニブログ)に今回の件に関し、「我国の戦闘機訓練事故は世界最多である。国民は有名女性飛行士の死に拘泥する必要はない。無名の男性飛行士が数多く犠牲となっているのだ。」という冷めた書き込みを発見した。

しかし中国ネットの情報は限られている。日本ネットとからめて抽出してみる。

2016年10月3日 天津市の公園に殲10戦闘機が墜落したもよう。パイロットは脱出。
2016年4月29日 殲15戦闘機が空母への着艦訓練中墜落、パイロット死亡。
2015年12月17日 海軍東海艦隊の戦闘機が墜落、パイロットは脱出。
2014年11月15日 四川省・成都郊外で、殲10戦闘機が墜落、詳細は不明。
2014年6月6日 海軍機が夜間訓練中に墜落、詳細は不明。
2013年1月10日 部隊政治委員が戦闘機搭乗の際、機銃が誤作動、政治委員は転落死。
2012年3月7日 戦闘機が訓練中に左エンジン故障により墜落、パイロットは脱出。
2011年4月17日 空中での特殊事情により市街地を避けて墜落させる。パイロット脱出。

2013年以前が中国ネットからの引用である。意図的に軽微なケースを紹介しているように見える。香港メディアによるとここ3年の中国戦闘機事故は25件、犠牲者50人という。

隠せるものはすべて隠すという軍の方針は揺らいでいない。今回は花形パイロットの殉職で、どうにも隠しようがないなかった。しかしこれだけ迅速な事故報道は初めてだろう。後追いの追悼ニュースは相次ぎ、そのコメントの多さは米大統領選の比ではない。

原因を追究して再発防止策を講じない限り、事故はなくならない。今回の女性トップガン非業の死も、無駄死に終わる可能性は高そうだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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