年末調整は多くの給与所得者にとって関わりのある手続きだが、最大限活用できているだろうか。最低限の必要項目だけを記入して提出してしまってはいないだろうか。年末調整で対象となる所得控除にはさまざまな種類があり、これらについて申告せず適用を受けられないのは非常に勿体ない。各控除の要件を知り、適用の可能性があるものについては積極的に申告して行こう。

目次

  1. 年末調整とは
  2. 年末調整の控除の種類13種
    1. 基礎控除
    2. 給与所得控除
    3. 扶養控除
    4. 配偶者控除
    5. 配偶者特別控除
    6. 勤労学生控除
    7. 寡婦(寡夫)控除
    8. 障害者控除
    9. 社会保険料控除
    10. 生命保険料控除
    11. 地震保険料控除
    12. 小規模企業共済等掛金控除
    13. 住宅借入金等特別控除
  3. 年末調整金額の計算方法
  4. 控除漏れをなくそう

年末調整とは

給与の支払者は、毎月の給与支払に際して一定額を徴収することとなっている。このときの徴収額は支払った給与を元に算出した推定の所得税額であり、これを源泉徴収税と呼ぶ。

源泉徴収税はあくまでも年間を通じて支払われる給与が一定であることを想定しているため、年間で支払われた給与と必ずしも一致するとは限らない。また各種控除についても考慮しないため徴収した税額が本来課されるべき所得税額とは一致しない。こういった支払税額の不一致を精算する手続きを、年末調整と呼ぶ。

年末調整では上記の理由による不一致がほとんどである(特に控除の適用に寄るところが大きい)ため、大部分の人間は払い過ぎた税金を還付される = 得をするといった認識が強いが、逆に源泉徴収税が不足していた場合は不足分を年末調整時に支払わなければいけない。年末調整は給与所得者が確定申告する手間を省くためのものでもあるから、損得に関わらず必ず行わなければいけない手続きなのだ。

年末調整の控除の種類13種

年末調整において対象となる所得控除は、全部で13種類。それぞれ要件と共に紹介する。

基礎控除

要件はなし。控除額は38万円。

給与所得控除

要件は給与所得者であること。控除額は給与によって変動する。最低65万円。

扶養控除

要件は所得税法上の扶養親族がいること。控除額は38~58万円、扶養親族の年齢や納税者との同居の有無によって区分される。

配偶者控除

要件は所得税法上の配偶者がおり、かつ配偶者の合計所得金額が38万円未満であること。控除額は38万円。老人控除対象配偶者(70歳以上)の場合は48万円。

配偶者特別控除

要件は、税法上の配偶者の要件を満たし、かつ配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満であること。控除額は3~38万円。配偶者の所得額によって区分される。

勤労学生控除

要件は勤労学生であること。控除額は27万円

寡婦(寡夫)控除

要件は所得税法上の寡婦(寡夫)であること。控除額は27万円。特定の寡婦控除については35万円。

障害者控除

要件は納税者や配偶者、扶養親族が障害者であること。控除額は27万円、40万円、75万円。障害の程度や同居の有無により区分される。

社会保険料控除

要件は社会保険料を支払っていること。控除額は社会保険料として支払った全額。

生命保険料控除

要件は生命保険料を支払っていること。控除額は最大で12万円。保険契約を締結した日時や支払った生命保険料によって区分される。

地震保険料控除

要件は地震保険料を支払っていること。控除額は最大で5万円。保険契約を締結した日時や支払った地震保険料によって区分される。

小規模企業共済等掛金控除

要件は、小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払っていること。控除額は小規模企業共済等掛金として支払った全額。

住宅借入金等特別控除

要件は、住宅借入金等特別控除の適用を受けていること。住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築や増改築を行ったとき、一定の要件を満たす場合に適用が認められる。控除額は最大で40万円。住宅の取得条件や取得時期などによって区分される。

年末調整金額の計算方法

年末調整金額は、次の流れで求められる。

1. 給与総額 - 給与所得控除 = 給与所得控除後の給与額

2. 給与所得控除後の給与額 - 各種控除 = 算出所得税額

3. 算出所得税額 - 住宅借入金等特別控除額 = 年調所得税額

4. 年調所得税額 × 税率(102.1%) = 年調年税額

5. 年調年税額 - 徴収税額 = 年末調整金額

注意すべき点は、給与所得控除と各種控除は適用の段階が異なるということである。仮に配偶者控除の適用を受けたい場合、配偶者の給与総額が103万円あったとする。配偶者控除の要件は、配偶者の所得が38万円未満であるから一見適用外とも思えるが、ここに給与所得控除を適用すると38万円となるため、配偶者控除の要件を満たすことになるのだ。

控除漏れをなくそう

これはあくまでも一例であり、その他控除についても対象の所得が条件となるものは多いが、要件が言うところの所得が、どの時点での所得を指しているのか間違えてはいけない。正しく認識すると、これまで控除対象外と思っていたものの中にも要件を満たすものがあるのではないだろうか。

また、保険料控除については金額次第で別途保険料控除証明書が必要になるため書類の用意を忘れてはいけない。特に住宅借入金等特別控除では、申告のための書類が適用年数分まとめて送られてくるため、申告忘れは元より保管にも気を配ろう。その他、単純な記入ミスによって控除が受けられないことのないよう、年末調整の際には細心の注意を払って対応していただきたい。