「各級地方政府と公職者の信用事故に対する懲罰を厳格に実施する。大衆の利益に危害を及ぼし、市場の公正な取引に損害を与えているからだ」−−。

最近、中国で開催された中央全面深化改革領導小組29回会議は、以上のように強調した。現在全国法院(裁判所)の抱える信用事故のうち“官員失信”案件は1100件を超える。彼らの信用事故は、政務と個人の両面にわたり、公私の区別は極めてあいまいだ。

実際のトラブル

陝西省の某市法院が公布したブラックリストには、地区の安全監督局副局長を始め、8人の公職人員が含まれていた。負債合計は400万元である。

湖南省某県の公布したリスト5人の中には、県の規律検査委員会、税務局の人員が含まれ、負債合計は58万元だった。

これが広東省のような大省では桁違いになる。2012年と13年の2年間で党政機関と官員の受けた判決は3829件、金額は141億3500万元に及んだ。昨年はかなり減少し、77案件1億6100万元だった。未執行分は764件、18億元である。

法院は不履行の債務を支払え、と判決を出す。しかし党政機関と公職者に賠償等の義務や責任を課しても、実際の執行は難しい。この現象を重点的に是正しなければならない。

組織の原因、個人の原因

“官員失信”は少なからず党政主要幹部の異動に起因する組織的な原因がある。新任者は前任者の作った負債を自分のものとは考えない。

中国社会科学院政治学研究所研究員は、ある時期以降、人事考課は科学的ではなくなった。地方政府はプロジェクトを乱発、盲目的に債券を発行し発展をはかる。前任者の作った債務は別としてである。累積債務の継続という考えを欠いていると指摘している。

問題のある党政機関では、帳簿上の資金移動を繰り返し、最後は偽帳簿へ納める。それはすでに実態のない架空の数字にすぎない。

さらにこうしたプロジェクトの周辺で、官員たちは、個人の資格で担保提供している。浙江省・温州市の裁判所は、特殊主体(公共事業)の金融債券紛糾事案の「集中執行大行動」を行った。成果がいくつか挙がった。

2015年4月、温州市某県税務部門の公職人員が、親戚の借金400万元のために担保を提供した。親戚は1年の返済期限までに、140万元を返せなかった。彼は返済義務不履行の連帯責任を取らされ、15日間拘束された。公共事業関連の借金に違いない。

地元の金融機関は貸出し審査をするとき、公職人員による担保提供を求める。地方幹部に公私の区別は全くない。

最新IT技術と封建的地方ボスが同居

“官員失信”はその地方の印象と経済発展の土壌造成に、マイナス影響が大きい。まず公共事業プロジェクトにおける情報共有だ。誰が欠損を出し、誰が埋め合わせる責任を持つのかはっきりさせる。これができない結果、“鬼城”と呼ばれるゴーストタウンが林立しても平気でいられるのである。

責任の所在不明の公共事業が乱立した結果、地方政府の負債は16兆円(250兆円)にまで膨れ上がった。この記事はその要因に、人間的側面から光を当てた形である。地方ボスとして、ある程度上昇すれば、誰もが絡めとられる罠の物語でもある。中国の地方統治に、「法治」はありえない。最新IT技術と封建制が同居している。いびつ極まる体制と言うしかない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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