根が無精だからこそ根本的に変えられる

タニタのオフィスには社長室はなく、谷田氏も社員たちと同様、フロアに置かれたデスクの一画で仕事をし、モバイルロッカーにモノを収めて帰宅する。

「仕事中に机の上に置くのは、今取りかかっている資料とパソコンくらい。作業が終わったら、保存が必要な資料はPDF化してパソコンに取り込み、紙は捨てます。そもそも社内全体の紙の量が減っていますし、社長室や自分専用のデスクがなくても、特に不便は感じません。

私はきれい好きな人間ですが、根は無精です。身の回りはきれいに保ちたいけれど、本音を言えば掃除をするのは面倒。だから、部屋やオフィスを汚さないための仕組み作りに力を入れるのです。たとえば、窓に使っているブラインドはすべて羽が縦向きのものにしています。横向きのものよりもほこりが溜まりにくいと考えたからです。

『根が無精だから、整理ができない』と考える人もいますが、私は無精だからこそ、仕事のやり方を改善できると思っています。書類が山積みになったデスクを何時間もかけて整理するのが嫌だから、『整理に労力を費やさずに済む方法はないか』と考える。そうすれば、『1日1分だけ片づければ、デスクをきれいに保てる仕組み』といったアイデアも生まれます。整理が苦手な人ほど、ぜひ『整理しなくていい仕組み作り』に力を入れてはいかがでしょうか」

谷田千里(たにだ・せんり)〔株〕タニタ代表取締役社長
1972年、大阪府生まれ。93年、調理師専門学校卒業後、佐賀短期大学(現・西九州大学短期大学部)食物栄養学科に進学。97年、佐賀大学理工学部卒業。船井総合研究所などを経て、2001年に〔株〕タニタ入社。05年、タニタアメリカ取締役。08年5月より現職。(取材・構成:塚田有香 写真撮影:長谷川博一)(『 The 21 online 』2016年11月号より)

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