紙を減らすためには上司の意識改革が必須
改革が成功した理由は、もう一つある。それは経営トップが思いきった投資をし、改革への本気度を示したことだ。
「まずは、紙の書類を減らすことが必須でした。そこで社員に一人一台ずつ、タブレットのSurfaceを支給しました。今は5万円程度で買えるタブレットもありますが、あえて一台あたり15万円のものを選びました。以前の弊社はIT投資が少なかったという反省もあり、お金をかけることにためらいはありませんでしたね。
それに大きな投資をすれば、社員たちに『タブレットをちゃんと活用してくれないと、お金をかけた意味がないじゃないか』と文句を言えますから(笑)。
ただ、紙からデジタルへの移行には、ある程度の時間が必要でした。紙に慣れた上司の世代ほど、どうしてもプリントアウトした資料を欲しがる。若手のほうが、『Google Driveでシェアできるのに、どうしてわざわざ印刷するんですか?』と手厳しいですよ。それに影響されて、上司たちの意識もかなり変化しつつあります。今では、会議で紙の資料を配ることはほとんどありません。資料は事前にGoogle Driveかメールで共有し、会議中はタブレットで見るだけ。営業も当初は従来のやり方をなかなか変えられず、お客様を訪問する際に紙をたくさん持って行っていましたが、最近になってようやくタブレットひとつで商談を進めるようになりました。私も営業に同行するたび、紙を使っているのを横目で見ていたのですが、こうした光景が見られるようになったので、社員たちが変わるのを待った甲斐がありました」
社員が自主的に整理整頓をするように
この言葉からもわかる通り、谷田氏は現場のやり方にはいちいち口を挟まず、社員たちの自主性を尊重している。
「仕組みを作ったら、あとは待つのが経営者の仕事。オフィスにモノを置けない仕組みさえ作ってしまえば、社員たちは『では、どうすればいいか』と解決策を考えざるを得ない。社長の私が特に指示を出さなくても、社員同士が知恵を出し合い、『この書類とこの書類は内容が重複しているから、一本化しよう』といったアイデアがどんどん出てくるのです。こうして良いスパイラルに入れば、勝手に改革は進んでいきます。
先日もふと気づいたら、『○階が一番汚れています。気をつけましょう』などと誰かが書いた張り紙がしてありました。自発的にオフィスをきれいに保とうと声をかけ合っているわけです。環境を変えれば社員の意識もこれだけ変わるものかと驚いています」