読者のみなさんは「せんべろ酒場」をご存知だろうか? せんべいをおつまみにだす酒場ではない。「1000円台でベロベロになるまで飲める居酒屋」という意味だ。筆者の友人にも、せんべろ酒場マニアがいるが、最近では丸亀製麺の「1000円で30分飲み放題セット」がホットな話題となっている。SNSなどネット上の評判も上々で、新たなファン層を獲得しているようだ。
その丸亀製麺をはじめとする、飲食店の開発と運営をおこなう企業グループの持株会社が、トリドールホールディングス <3397> である。
折しも2017年は「酉年」である。トリドールは羽ばたく鳥のように、さらなる飛躍を遂げるのであろうか?
デフレの勝ち組、もはや「神」的存在?
2016年11月、丸亀製麺は新宿や六本木などの一部店舗で「1000円で30分飲み放題セット」を実験的に開始した。
飲み放題メニューは3種類だ。Aセットは「親子とじ+選べる天ぷら・惣菜3点+飲み放題(ビール、ハイボール、レモンチューハイ)」で1000円。Bセットは「うどん(釜揚げ、ぶっかけ、かけ、ざる)+選べる天ぷら・惣菜3点+飲み放題(同)」で同じく1000円。Cセットは1200円になるが、「かつとじ+選べる天ぷら・惣菜3点+飲み放題(同)」である。
選べる天ぷら・惣菜3点は、うどんのトッピングの揚げたて天ぷらはもちろん、「なすの揚げびたし」「ホウレン草の胡麻和え」など飲み放題セットならではのオリジナルも提供している。
筆者の友人は、Cセットの「かつとじ」と鶏天、ちくわ天、ローストビーフサラダの3点を選び、30分でビールを6杯飲んだという。さらに「かつとじ」の残った卵煮を130円で追加したご飯にぶっかけ、ネギを山盛りにした「ネギ卵とじ丼」で締めたそうだ。
30分600円で延長できるのも嬉しい。デフレの勝ち組ともいえる丸亀製麺であるが、飲み放題セットはデフレビジネスにおいてまさに「神ってる」と言えるだろう。
既存店24カ月連続プラスで「神ってる」
丸亀製麺が「神ってる」のはそれだけではない。既存店の伸びも業界から見ると「神ってる」のだ。
小売や外食は、新規出店を含まない「既存店の売上動向」が最も重要な指標となる。丸亀製麺の「既存店の売上動向」は2016年7月まで、なんと24カ月連続でプラスを記録したのをご存知だろうか。8月は前年割れとなり記録が途切れたが、9月以降は再び「羽ばたく鳥のように」復活。2016年上期(4〜9月)の伸びが3.8%増だったのに対し、10月は6.7%増、11月8.5%増を記録している。
丸亀製麺の快進撃を後押しする要因の一つとして、ファンの心に響く「企画力」が挙げられる。たとえば、先に述べた「1000円で30分飲み放題セット」のほか、昨年6月にはスマホ向けアプリを導入し、割引や無料クーポンの配布を開始している。スマホ向けアプリは9月末に224万ダウンロードを記録する「神アプリ」となり、ちょっとしたスマホゲーム並みのダウンロード数である。
メニューも、「タル鶏天ぶっかけうどん」「牛すき釜玉」「牛すきかけうどん」「親子丼」「大海老うどん」などフェア商品や新しい定番商品を導入。一番安い釜揚げ、かけ、ざる、ぶっかけうどんの290円から、単価の高いメニューまで品揃えが豊富なのも魅力だ。