信託銀行、投資信託など「信託」という言葉は日常よく目にしても、それがどのような仕組みなのかはよくわからないという人が多いのではないでしょうか。しかしこの信託が近年、相続対策として注目されています。
信託とは、財産を持っている人がその活用や処分を特定の目的に従って、指定した人に託す制度です。この場合、財産そのものはもともとの委託者のものですが、その財産が生み出す利益は託された人(受益者)のものになります。こうした仕組みを業務として担っているのが、信託銀行や信託会社となります。
ポイントは節税ではなく、「円滑な継承」
2007年、信託法が改正され信託の自由度が広がった結果、多くの人が利用しやすくなり、相続対策としても見直されることになりました。ただし、「信託を使うと相続税の節税になる」といったメリットではなく、あくまでもポイントは「財産を安心して、遺された人たちへ円滑に承継していくことが出来る」という点にあります。
例えば普通の遺言であれば、指定することができるのは「自分の財産を誰が受け継ぐか」ということのみとなります。しかし信託を活用すると、信託した時点から30年先までならその財産を次に誰が相続するか(2次相続以降)までを指定できます(受益者連続型信託)。
あるいは相続発生時、被相続人の財産は遺産分割協議が完了するまでは相続人の共有物となるため、預金口座などは凍結されます。そのため、葬儀の費用や相続税など、当座の資金が不足してしまうこともあります。そんな場合を見越して、あらかじめ信託を設定して相続人の中から受取人を決めておき、自分の死後直ぐに財産の一部を受け取れるようにします。
さまざまなシナリオを描けるのが信託のメリット
推定相続人がまだ若く、まとまった財産をそのまま引き継がせるのはハイリスクな場合もあるかもしれません。このように財産管理が心もとない人に対して信託を利用し、年金形式にするなどして確実かつ安全に渡していくという方法も可能です。
また、自分が持っている財産を信頼する家族に託しておく「家族信託」の制度を活用すれば、もしも自分が認知症になって判断能力が低下したとしても、受託者である家族が信託契約の規定範囲内で判断し、処分を実行することができます。
以前の信託法は制約が多く、その仕組みもわかりづらかったのですが、2007年の改正後は自由度が高まりました。その分、相続対策としても遺言を補完する形で、さまざまなケースを想定し、細かく柔軟な指定をすることが可能になっています。
もっとも、遺言では指定できても信託ではできないものもあること、節税効果は期待できないこと、家族信託では信頼できる家族が不可欠であることなど、デメリットや制約もあることは心得ておきましょう。(提供: IFAオンライン )
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